本継!SPORTS BOOKリレーBACK NUMBER
『シークレット・レース ツール・ド・フランスの知られざる内幕』
元ロードレーサーが克明に描く、ドーピングスキャンダルの真実。
text by
近藤史恵Fumie Kondo
photograph bySports Graphic Number
posted2018/10/07 16:00
『シークレット・レース ツール・ド・フランスの知られざる内幕』タイラー・ハミルトン、ダニエル・コイル著 児島修訳 小学館文庫 886円+税
1999年からの7年間、ツール・ド・フランスの総合優勝者の名前は空白である。もちろん、ランス・アームストロングによるドーピングスキャンダルが原因だ。この本の著者のひとりであるタイラー・ハミルトンは、ランスの元チームメイトであり、ランスの近くにいてなにもかもを見てきた人間のひとりである。
ハミルトンのことも、当時、ロードレースファンだった人間なら忘れない。落車で鎖骨を骨折しようとも、痛みに耐えながらレースを完走する姿に、わたしも胸を打たれた。この本の第1章はこんな一文からはじまっている。
“僕は、苦痛に耐えるのが得意だ。”