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セリエCから這い上がったインザーギ。
情熱と欲望でボローニャを統率中。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byUniphoto press
posted2018/09/26 16:30
ポジショニング勝負でゴールを量産した“ピッポ”インザーギ。ミランでは苦汁を味わったが、監督業でそのしたたかさを再び発揮するか。
ネスタ率いるペルージャに勝利。
インザーギ率いるベネツィアは2016-2017シーズンのセリエCで優勝し、2部のセリエBに昇格する。就任2年目の2017-2018シーズンは惜しくもセリエA昇格こそ逃したとはいえ、レギュラーシーズン5位で3~8位の6チームによるプレーオフに進出した。
その1回戦では、現役時代のミランで同じ釜の飯を食い、イタリア代表では2006年W杯優勝の喜びを分かち合ったアレッサンドロ・ネスタ率いるペルージャと対戦。3-0の勝利を収めている。
当時のベネツィアを知る関係者によると、インザーギはそのカリスマで選手たちを魅了する監督だったという。試合中の選手たちには最後まで戦い続ける姿勢を求め、チームは「ミステル(監督)のためなら火の中にでも飛び込める」といった忠誠心で結ばれていたという証言もある。
インザーギ自身はこう振り返る。
「ベネツィアでは毎試合経験を積んできた。試合が終わるたびに何かを学んでいたほどさ」
炎のような情熱、飢えのような欲望。
今シーズンから指揮を執るボローニャの監督就任会見では、次のようにも述べている。
「良い監督は学ぶことを止めない。いつも、誰からでも学ぼうと心掛けてきた」
ボローニャのチェアマン、ジョーイ・サプートがリストアップしていた新監督候補の中には、実績十分のフランチェスコ・グイドリンや、「イタリア版グアルディオラ」と称される新進気鋭のロベルト・デゼルビらも含まれていたという。なぜ、そこからインザーギが選ばれたのか。
新監督に求める条件として、カナダ人のサプートが挙げていたのは「ファイアー&デザイアー」だった。
「炎のような情熱」と「飢えのような欲望」を兼ね備えた人物だ。
現役時代のインザーギは見るからに細身で、屈強な守備者に当たり負けしないパワーを備えていたわけではない。飛び抜けたスピードを誇っていたわけでもない。だから不思議がられた。なぜ、そんなにゴールを量産できるのか?
ストイックな食生活はよく知られていた。かなりのプレイボーイとして少なからぬ浮名を流す一方で、食事にはとことん気を遣い、昼食と夕食はずっと同じシンプルなメニューだったとも、飲むのは水だけでアルコールの類はもちろん清涼飲料水すら断っていたとも、そうした“伝説”が囁かれていたほどだ。