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セリエCから這い上がったインザーギ。
情熱と欲望でボローニャを統率中。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byUniphoto press
posted2018/09/26 16:30
ポジショニング勝負でゴールを量産した“ピッポ”インザーギ。ミランでは苦汁を味わったが、監督業でそのしたたかさを再び発揮するか。
弟シモーネはラツィオを率いる。
「こんな会長を夢見てきた。(監督を)信頼して、プレッシャーをかけず、(自由に)仕事をさせてくれる」
インザーギがそう語っている通り、チェアマンのサプートは監督の人選を慎重に進める分、いったん指揮権を与えてからは一切口出しをしないトップのようだ。とはいえ、勝ち点を思うように伸ばせずに、ボローニャのセリエB降格が現実味を帯びてくれば、ティフォージ(熱心なファン)が黙っているはずがない。
その意味でも大きな注目に値するのが、3歳年下の実弟シモーネ・インザーギ率いるラツィオとの直接対決だろう。
夏のバカンスを一緒に過ごす、仲の良い兄弟として知られている。一日に何度も連絡を取り合っては、サッカーや戦術の話もするという。
現役時代の実績は比べようがない。イタリア代表歴は兄の57試合25得点に対し、弟は3試合0得点。セリエA通算も兄の370試合156得点に対し、弟は187試合43得点にとどまる。
ただし、監督としての実績では弟のシモーネが先を行く。現役時代の古巣であるラツィオを2季連続EL出場権獲得に導いただけでなく、ユベントスが新監督候補として関心を寄せているという噂すら取り沙汰される。
父親が願う直接対決の結果は……。
ふたりの父親、ジャンカルロさんは次のように語る。インザーギ家の仲睦まじさは、兄フィリッポと弟シモーネの現役時代からよく知られている。
「ラツィオのホームゲームはシモーネが、ボローニャのホームゲームはフィリッポが成功してくれたら良いのだが……」
最初の直接対決は第18節。年末の12月26日に予定されている。ボローニャのホームゲームだから、父親のジャンカルロさんはフィリッポの成功を祈るのだろうか。胸を借りる立場にあるのは兄の方だ。
フィリッポがピッポとなり、現役時代のインザーギは「スーペル・ピッポ」と呼ばれていた。最高のピッポ、あるいは超人的なピッポ――。
スリムな体型から想像するに、食生活の節制は今も続けているのかもしれない。ボローニャの選手たちが、飢えた指揮官のために「火の中にでも飛び込める」ようなチームとなっていけば――。
インザーギ兄弟でユベントスの監督の座を争うような、そんな未来が遠からず訪れるかもしれない。