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セリエCから這い上がったインザーギ。
情熱と欲望でボローニャを統率中。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byUniphoto press
posted2018/09/26 16:30
ポジショニング勝負でゴールを量産した“ピッポ”インザーギ。ミランでは苦汁を味わったが、監督業でそのしたたかさを再び発揮するか。
堅守構築こそピッポ監督の手腕。
迎えた第5節(9月23日)の対戦相手は、昨季のCLでベスト4まで勝ち上がった強敵ローマ。苦戦必至の予想が大勢を占める中、ボローニャはそのホームゲームで2-0の快勝を収めている。
カナダ人の実業家であるサプートは、伝統的なセリエAのクラブのオーナーたちとは一線を画し、長期的なビジョンの下で決断すると言われている。それでも、インザーギにとっては一息つける大きな勝利となった。
インザーギが志向しているのはディフェンシブなサッカーだ。基本システムは3-5-2とはいえ、実質的には5バックとなりがちで、5-3-2となる時間が長い。全体の重心が低いので、自陣でボールを奪回してからの縦に速い攻撃には厚みがない。開幕からゴール欠乏症に陥っていたのも偶然ではないだろう。
その一方で組織的な堅守を構築するインザーギの手腕は、セリエB時代の対戦相手の指揮官が「ベネツィアからゴールを奪うのは骨が折れる」(当時チェゼーナを率いていたファブリツィオ・カストーリ監督)と認めていたほどだ。
ローマ戦の金星は36分に先制したのが大きかった。絵に描いたような堅守速攻のカウンターから59分の追加点を奪うと、その後は5-3-2を5-4-1としてさらに重心を落とし、2点のリードを守り抜いた。
執念を感じたローマ戦での金星。
最後の砦となるGKにウカシュ・スコルプスキを擁しているのも、インザーギのチームらしい。ローマに在籍していた昨季は、ブラジル代表アリソンの控えに終始した。出場機会に“飢えている”ボローニャの新守護神は、第5節のローマ戦で5つのセーブを繰り出し、古巣をシャットアウトしてみせた。
ローマ戦の試合展開が物語っている通り、先制点を奪えるか否かが、ボローニャのシーズンの成否を大きく分けそうだ。
そしてもうひとつ。
指揮官インザーギが選手たちに要求するのは、すべてのボールに食らいつき、最後まで戦い続けること。そうした姿勢を貫いて、待望の結果を手に入れたことが、ローマ戦で得た最大の収穫かもしれない。