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巨岩ロナウドが去ったマドリーは、
まるでバルサ的なパスサッカー。
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph byUniphoto press
posted2018/09/19 17:00
ロナウドのいない白い巨人は違和感がある一方で、ベイルら数多くスーパースターが連動して攻めるスタイルは新鮮さがある。
ただし後半はロングボールが。
事実ビルバオ戦では、相手の粘り強いマンツーマンディフェンスに苦しみ、時間の経過とともに攻めが単調になっている。先制されたこともあり、手っ取り早くゴールに近づこうと、とりわけ後半はロングボールが多用された印象だ。カゼミーロを後半の頭から投入してアンカーに据えたのは、ロペテギ自身が新しいスタイルにまだ確信を持てていない証拠でもあっただろう。
試合は結局、ルカ・モドリッチに代えて送り込んだイスコの64分のゴールで追いついたものの、突き放すことはできず、マドリーは開幕4連勝を逃している。
どんなチームにとっても難しいサン・マメスで勝点1を奪ったとポジティブに捉えられないのは、同じ節に宿敵バルサが、同じく難所のアノエタ(レアル・ソシエダの本拠地)で、先制されながらも逆転勝利を収めたからだ。
バルサの場合も、代表戦の疲労と今後の過密スケジュールを考慮して温存する予定だったフィリペ・コウチーニョとセルヒオ・ブスケッツを後半に引っ張り出される格好となったが、それでもここで勝ち切れたかどうかは大きな違いだ。
「最後の局面で精度を欠いてしまった」
ビルバオ戦後、ロペテギ監督はそうコメントしている。
ロナウドの不在を嘆くとすれば。
この先、マドリーがロナウドの不在を嘆くとすれば、まさにこの部分だろう。
確かにベイル、そして昨シーズンまではロナウドのアシスト役に徹していたベンゼマも、鎖を解かれたように伸び伸びとプレーし、実際にここまでゴールという結果も残している。さらに、調子の良さは伝わるものの、スペイン代表とは違ってなぜかリーガではゴールが遠いアセンシオがエンジン全開となれば、得点力が著しく低下することもないのかもしれない。
しかし、単純な得点力と、ここ一番での勝負強さ、決定力は似て非なるものだ。
ビルバオ戦の終了間際、思わずため息をついてしまうようなシーンがあった。
アセンシオがドリブルで持ち上がり、エリア内にいたベンゼマに絶好の縦パスを入れる。だが、フリーのベンゼマが選択したのは、ルーカス・バスケスへのラストパス。これをあえなく相手DFにカットされた瞬間、イスコが顔を覆い、ロペテギが苦笑を浮かべ、マドリディスタの脳裏にロナウドの影がよぎった。