猛牛のささやきBACK NUMBER
なぜU18ジャパンは打てなかったか。
木のバット、牽制、ストライク。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/09/12 11:30
金属バットから木製バットへの移行は簡単ではない。高卒の打者が投手よりも成長に時間がかかるのはその影響もあるかもしれない。
台湾の監督「金属バットだと打つだけで点が入る」
南海ホークスで4年間プレーした経験を持つ台湾のリ・ライファ監督は、金属バットと木製バットの違いをこう語る。
「金属バットに比べると、木製バットは本当に(打球がヒットになる)ポイントが小さい。そのポイントで正確に捉えなければ、インコースのボールはバットが折れてしまうし、アウトコースのボールは打球が死んでしまう。金属バットと木製バットの違いは非常に大きいので、10日間や2週間程度で慣れるのはとても無理です。
台湾では高校の3年間で時間をかけて木製バットをものにします。だからその後、プロに入ってもすぐに慣れることができるんです」
日本戦で、台湾は巧みにバントやスクイズを決めるなど小技が冴えたが、それは木製バットを使用しているからこそだと、リ監督は言う。
「金属バットだと打つだけでどんどん点数が入るので、作戦はそれほどいりません。でも木のバットだと1試合にヒットは3、4本しか出なかったりする。だからバントや作戦が必要なのです」
お金がかかる木のバット採用は難題。
日本の高校野球も、国際ルールに合わせて木製バットに……と簡単には行かないようだ。
永田監督も、日本高校野球連盟の竹中雅彦事務局長も、木製バットの問題は「永遠の課題」だと口を揃える。竹中事務局長は言う。
「一番難しいのは費用の問題です。(木製バットは費用がかかるため)潤沢に資金のある学校が有利になるような改革は、うちとしてはできません。もちろん国際大会で勝つためには木のバットでやるのが一番いいと思いますが、公立高校で、部費が少ない中でやっているような学校は厳しくなりますから」
大会時期を今より遅らせれば、木製バットに対応する準備期間は増えるが、日本だけの事情で時期を動かすのは難しく、また、学校の授業と重なってしまうという問題もある。
ただ、木製バットの使用経験や指導経験の豊富な元プロの指導者などを代表のスタッフに加えたり、データ分析や選手選考のやり方を見直すなど、勝つ環境を整えるために早急にできることもありそうだ。