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なぜU18ジャパンは打てなかったか。
木のバット、牽制、ストライク。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byKyodo News

posted2018/09/12 11:30

なぜU18ジャパンは打てなかったか。木のバット、牽制、ストライク。<Number Web> photograph by Kyodo News

金属バットから木製バットへの移行は簡単ではない。高卒の打者が投手よりも成長に時間がかかるのはその影響もあるかもしれない。

吉田「根尾は結構変人です。行動がおかしい」

 課題が多く浮き彫りになった今大会だったが、出場した選手たちが得たものは大きい。国際大会の中で自分たちの立ち位置や課題が見えたことはもちろん、高校球界トップレベルの選手たちが同じチームで過ごす中で、技術や考え方など、互いに刺激を与え合った。

 今夏、史上初の2度目の春夏連覇を達成した大阪桐蔭の主将で、今回の代表でも主将を務めた中川卓也は、視野が広がったと言う。

「自分はどちらかというと、野球を楽しむというよりも、勝つことによって楽しめる、勝つことによって後悔しない、というふうに思っていました。でも野尻(幸輝・木更津総合)とかが、『野球を楽しめば硬くならない』ということを言っていたり、小針(崇宏)コーチ(作新学院監督)に『野球をもっと楽しみなさい』ということを言われました。そこは勉強になりました。自分の考えが間違っていたというわけではないですけど、1つ引き出しが増えたというか、そういう考え方もあるんだな、と」

 根尾は、「吉田輝星(金足農)の冬場のトレーニングの話や、練習時間が短くても勝っている学校はなぜ勝てるのかとか、それぞれの学校の強さの秘訣をいろいろと聞いて勉強になりました」と言う。

 逆に吉田も、「根尾は結構変人です。部屋でいきなり体幹(トレーニング)を始めたり、ところどころ行動がおかしい」と笑いながらも、そのストイックさや技術に刺激を受けたようだ。

「根尾も柿木(蓮・大阪桐蔭)も、スライダーが自分よりストレートに近い球速で、自分と感覚が違っていた。そういうところを参考にできればすごく大きいなと思いました」

 甲子園で次々に新しい引き出しを開けて周囲を驚かせた風雲児が、また新たな引き出しを増やしそうだ。

根尾と同部屋だった唯一の2年生。

 今大会のメンバーで唯一の2年生だった星稜のエース奥川恭伸も、同部屋の根尾から多くの収穫を得たという。

「バッター心理とか、いろいろ勉強させてもらいました。例えば、バッターは意外と真ん中の球のほうが打ちづらいんだと教えてもらいました。ど真ん中にくると力んでしまったりするから。

 だから、そのつもりで投げ込めばいいのかなと。そこにツーシームやカットボールを投げられれば、バッターが力んで打ちにいった時にボールがズレるので、芯を外せるというイメージが湧きました。変化球の投げ方や握り方も教えてもらいましたし、チームに帰って試したいことがいっぱいあります」と目を輝かせた。

【次ページ】 来年のW杯出場権はどうにか確保。

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