欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
日本サッカーにジュニア育成革命を!
ダバディが知るフランス式の真髄。
text by
フローラン・ダバディFlorent Dabadie
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2018/08/23 08:00
ロシアW杯での日本の戦いぶりは人々の心を打った。ただその一方で強豪国はムバッペらさらにスケールの大きい選手を育成しているのも事実だ。
欧州の指導者レベルを見ると……。
しかし今、日本サッカーの発展を図るうえで最も必要とされるのは、ピラミッドの下方(サッカースクールや町クラブ、草サッカー)にいる指導者のレベルを引き上げることだと思います。フランスだけでなく、ベルギーやデンマーク、クロアチアのような小さな国でも、指導者全般のレベルを見ると、日本のはるか先を行っています。
フランスには、FFF公認のU-9、U-11、U-13指導者になるための講習があります。このカリキュラムはとても緻密な内容ですが、これを修了していない指導者がクラブで教えることはできません。
フランスの多くの子供は学校やサークルではなくクラブでプレーするため、子供たちはライセンスも持たないアマチュアコーチに指導されることはほとんどないのです。また、どのカテゴリーでもFFFの試験は難しい。高額なエントリーフィーにもかかわらず、何度も受けにやってくる指導者もいます。それだけの価値があり、一生懸命準備する必要もあります。
アイスランドの成功も好例だ。
日本では子供の指導者向けの「キッズリーダー」と「D級コーチ」ライセンスがあり、後者は2日間およそ10時間で取得できます。一方、フランスで一番下の「BMFライセンス」(U-8とU-11のコース)は約30時間の講習に加えて12時間の試験も受けなければなりません。費用も約10万円かかるため(880ユーロ)決して気軽には受けられない。ただ、卒業したクラブやスポーツ専門学校で教えることができます。
日本では出来るだけ多くの子供たちをサッカー・スクールに登録させようという方針であり、質より量なのでしょう。フランスは量より質です。フランスでは単純に指導者数増、ジュニア選手の登録数増を目指すのではなく、辛抱強く優れたシステムを作り上げました。
「UEFA A」や「UEFA B」ライセンスを持つ指導者が5歳の子供を指導しているアイスランドの成功を見ても、サッカー人口の絶対数が代表の強さとは直結しないことは明らかです。やはり大事なのは哲学、リサーチ、厳格さを持って育成システムを整えることだと思います。