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日本サッカーにジュニア育成革命を!
ダバディが知るフランス式の真髄。
posted2018/08/23 08:00
text by
フローラン・ダバディFlorent Dabadie
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
ロシアW杯のフランス代表チームの中心を担ったムバッペとマテュイディは、フランスサッカー界が誇るクレールフォンテーヌの国立研究所(INF)出身です。それゆえ、フランスサッカー連盟(FFF)のノエル・ルグラエット会長にとって、ロシアワールドカップ優勝の味は格別だったはずです。
1998年フランス大会優勝時も、何人かの選手はINFを筆頭にフランス全土にある国立育成アカデミーで育てられました。あれから20年、国内14カ所にあるこのエリートアカデミーは、まもなく最先端の15校目がリヨンに開校されるそうです。
FFFはそれぞれの県内のサッカー環境を事細かに研究した上で全国にアカデミーを配置してきました。ここで育成するのは、基本的に13歳から15歳のカテゴリー。入所できるエリートは、クラブに所属しながらアカデミーで2年間を過ごすのです。毎年フランスで登録される新たなプロ選手約300人のうち、およそ150人はこのU-15の育成システムを卒業した選手たちです。
2010年代にワールドカップを制したフランス、ドイツ、スペインの主な勝因は、いずれも育成制度の構造改革にありました。多くの資金と才能をここに投資しており、改革を主導した協会や連盟の達成感は大きかったはずです。
アジアともパートナーシップを。
一方で、伝統的なサッカー大国でありながら、国内サッカーが混沌としているイタリアやブラジル、アルゼンチンの覇権は終わってしまったのでしょうか。充実した設備や人材を備えた国立のアカデミーが不在で、育成はもっぱらクラブ頼み。にもかかわらず、経営難のクラブは目先の勝利のためにベテランを優先し、優秀なティーンエイジャーを海外に売ってしまう。
伝統国といえども、育成面の遅れを取り戻すにはセンスと情熱だけでは足りません。安定した国勢と健全なサッカー協会が必要なのでしょう。
FFFはフランス政府(スポーツ省)に支えられ、自身でも売り上げを大きく伸ばしています。さらにワールドカップ優勝の波に乗って、外国の協会のナショナルトレーニングセンターを作ったり、アジアの国とパートナーシップを結び、育成スタッフも派遣しています。
ベトナムサッカー連盟がフィリップ・トルシエの監修の元で作るアカデミーでも、FFFは大きく貢献するでしょう。フランスの育成の真髄とは一体なんなのでしょうか。