野球のぼせもんBACK NUMBER
王貞治会長は今も普及の最前線に。
遊びと学びが共存する野球教室。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byWCBF
posted2018/08/17 08:00
8月に松江市で開催された第28回世界少年野球大会松江大会の野球教室で、身振り手振りを交えて子どもたちを指導する王貞治氏。
「野球を通じて相手を受け入れる」
WCBFの太田裕己さんはこのように話す。
「王理事長はここから未来のプロ野球選手を輩出するのが夢ではなく、野球を通じて子どもたちが友情を育むこと、世界の子どもたちが繋がることを一番に考えています。世界に関心が向いたり、無関心ではなくなる。その輪がどんどん広がっていけば、世界の争いだってなくなるかもしれない。それが最終目標ですよね」
大会にはコーチも世界各地から集まる。共同ヘッドコーチを務めるのは内川義久さんも充実感一杯の表情で話してくれた。ちなみにホークスの内川聖一選手の父親方の叔父だ。
「参加している子どもたちは10歳と11歳で、プレ・ゴールデンエイジと言われる世代です。男の子もいれば女の子もいて、野球の実力はバラバラ。言葉や文化、肌の色、宗教も違います。だけど、1つのボールを追いかけ、ともに過ごす中で子どもたちはその違いを超えて『相手を受け入れる』ということを学びます。
王理事長は『それが野球でなくてもいいんだ。だけど、自分は野球しかやってこなかったから、野球で伝えることが出来れば』とよく話されています。多様性を受け入れられるのがこの年齢。この大事な時期に人としての在り方を学ぶことができるのです」
末永く継続させるためにぜひ……。
数多くの子どもたちにぜひ体験してほしいと感じると同時に、ぜひスポーツ指導者や学校の教員の方々にもその目で実際に見てほしいと感じたこの大会。
しかし、今後末永く継続させるために、WCBFはいつまでも王さん頼みというわけにもいかないだろう。
王さんの思いを受け継ぐレジェンドが現れてはくれないだろうか。日米に影響力があり、多くの協賛も得られるうってつけの人物はやはりイチロー氏か。野茂英雄氏もいい。もしくは松井秀喜氏とデレク・ジーター氏のコンビも最高ではなかろうか。
それぞれに事情もあるだろうし、もちろん各々理念もお持ちだと思う。だとしても手を挙げてくれないかな、と勝手ながら期待をしてしまうのだ。