Jをめぐる冒険BACK NUMBER
若き森保J、6バック相手に困惑。
求めたい発想の転換とリーダー役。
posted2018/08/15 12:20
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
AFLO
1-0と白星スタートを切ったネパールとの初戦を終えたあと、左ウイングバックの初瀬亮は思わず、苦笑いを浮かべた。
「なんか初めての感覚というか。(長沼)洋一も杉ちゃん(杉岡大暉)も、みんな、どうしたらいいか分かれへんかったから……」
初瀬をはじめとする日本の選手たちを困惑させたのは、ネパールの日本対策である。
3-2-5のような形を取って攻撃をビルドアップしていく日本に対し、ネパールは日本のウイングバックにマンマークを付けて6-3-1のような形で応対したのだ。
まるでウイングのように高い位置を取る日本のウイングバックがサイド攻撃のカギを握るだけでなく、敵のディフェンスラインを横に広げる役割を担うことを、相手は分析済みだったのだ。
対戦相手のネパール代表を率いるのは、清水エスパルスや大宮アルディージャのコーチ、FC岐阜の監督を歴任した行徳浩二監督である。日本対策を講じてきたのは、明らかだった。
しかし、だからこそ、問われるものがあった――。
先制点は相手の逆手を取ったが。
インドネシアで開催されている第18回アジア大会。21歳以下のチームで乗り込む日本に対し、ネパールは大会のレギュレーションどおり23歳以下のチームにオーバーエイジ3人を加えて臨んだ。
「相手がこっちを見ながら守備をしてきたので……」と振り返ったのは、右ウイングバックの長沼である。たしかに相手の左サイドハーフは日本ボールになると、常に長沼の前に立ち、ボールではなく長沼のことばかりを見ていた。
だが、日本の先制点は、それを逆手に取ったものだった。
7分、ボランチの渡辺皓太が浮き玉のパスを送ると、長沼がマーカーを振り切って裏に抜け、マイナスのクロスを三笘薫が蹴り込んだ。「相手がマンツーマンで付いていて、裏を取れればチャンスだなと思っていた」と渡辺は言う。狙いどおりのゴールだった。
だが、その後、ゴールネットが揺れることはなかった。ネパールの選手たちが日本の攻撃に慣れてくると、簡単に崩せなくなったからだ。
三好康児がフリックしたり、初瀬が裏に走ったり、三笘がドリブルで仕掛けたりしたがチャンスにならない。それでも日本は5トップの形で強引にこじ開けようとした。