Jをめぐる冒険BACK NUMBER
若き森保J、6バック相手に困惑。
求めたい発想の転換とリーダー役。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2018/08/15 12:20
先制点の起点となるパスを送った渡辺皓太(左)。彼らが常に状況に応じたプレーをできるかがアジア大会でのポイントとなりそうだ。
W杯スペインvs.イランでの構図。
ネパールの6枚の壁を攻めあぐむ様子を眺めながら思い出したのは、ロシア・ワールドカップのスペインvs.イラン戦だった。
序盤からスピーディなパスワークを展開したスペインは、両サイドバックをともに高い位置まで上げて、イランを自陣に釘付けにした。しかし、それでも決定的なチャンスを作れなかったのは、イランがゴール前に強固な壁を築いたからだ。
イランの両サイドハーフはスペインのサイドバックをマークするため、深い位置まで帰陣した。それゆえ、ゴール前には6人が並び、本来の4バックはペナルティエリアの幅の中に収まっていた。
得点の匂いがしない前半を終え、スペインが後半にやってみせたのは、攻勢をさらに強めるのではなく、その逆だった。
あえてサイドバックの攻撃参加を控えさせると、イランのサイドハーフも帰陣しなくなり、ゴール前の壁が6枚から4枚に減ったのだ。こうなれば、スペインのもの。イニエスタのパスからジエゴ・コスタが決勝ゴールをもぎ取るのだ。
あえて攻撃の手を緩める――。堅守攻略のカギは、まるで童話「北風と太陽」を思わせる賢さ、だったのだ。
翻って、日本はどうだったか?
翻って、日本はどうか。相手が6枚で守備を固めるのが分かっているのに、ウイングバックをいつもどおり高い位置に張らせて5トップにする必要はないだろう。
相手をどこで引きつけるのか。マンマークされるなら、あえて高い位置を取らず、3バックの両サイドにオーバーラップさせて裏を狙わせてもよかった。
また、相手が1トップなのだから、後ろに3人を残しておく必要もなかった。実質2バックの4バックに変更し、前線の形も変えて相手のマークをズラすのも、攻略のひとつの手段だったはずだ。