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育成で獲ってドラフト上位に戻す。
SBで“早稲田の大竹耕太郎”再び!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/08/07 10:30
強打の西武打線を手玉に取り、プロ初勝利を挙げた大竹耕太郎(左)。同じ左腕だった工藤公康監督のねぎらいに満面の笑み。
育成で獲って“ドラフト上位”に。
一軍に上がってすぐに、首位を走るチーム相手に先発で当てられて、8回まで試合を作って勝利に結びつける。普通なら、ドラフト1位か2位で入団したルーキーの「仕事」だろう。
ということは……。
“育成”で獲って、半年で“ドラフト上位”に戻して使ってる……そういうことだろう。
この日の大竹耕太郎の覚醒で、ソフトバンクは2017年ドラフトで1位、2位を「3人」獲得したことにはならないか。
もちろん、ここまで技量を上げてみせたのは大竹耕太郎本人だろうが、その陰に「早稲田の大竹」に戻してみせたスタッフの頭脳と工夫と骨折りがあったはずだ。
「おばけフォーク」の千賀滉大が今ひとついつもの調子にほど遠い今季、そこを補うように8勝をあげる石川柊太。今や立派なレギュラーマスクに台頭した甲斐拓也に、今季8年目、腐らず頑張り続けた牧原大成は、二塁手のレギュラーとして、この暑い中で3割台をキープしている。みんな、みんな、育成を登竜門にしてきた選手たちばかり。
12球団で唯一、ソフトバンクが「育成枠」を有効活用している。それは、誰もが認めるところだろう。
よかった頃に戻してあげる発想。
5年先に、チームのどこかで開花できる潜在能力を持っているかどうか。
それがこれまでの“育成枠”の定義だとすれば、今後は違うのかもしれない。
「今はどん底かもしれないが、よかった頃に戻してあげれば、そこからさらに伸びていけるのでは……」
そんな発想が、新たな育成枠を生み出していくのではないか。
もしかしてプロ野球のスカウトって、「ロマンチスト」の方がいい仕事ができるのではないか。
いや、むしろ、ロマンチストでなければ、プロ野球のスカウトはできないのではないか。
まもなく、スカウトたちの勝負どころである「夏の甲子園」。そんなタイミングで、ふっとこんなことを思ってみたりしている。