燕番記者の取材メモBACK NUMBER
山田哲人が11種類のトス打撃を封印。
夏男の秘訣は「休むことですかね」。
posted2018/08/07 11:30
text by
浜本卓也(日刊スポーツ)Takuya Hamamoto
photograph by
Kyodo News
今夏、日本列島は半端ない暑さに見舞われている。体温を超えるほどの気温にパワーを奪われ、汗が噴き出て止まらない。
日陰に入っても、暑さに耐えられない。喉が渇く。肉体を鍛え上げた猛者たちが集うグラウンドでも、「暑い」「無理」という嘆きをあちらこちらで耳にする。
そんな中、涼しい顔で安打を量産する男がいた。ヤクルト山田哲人内野手は7月は打率4割2分5厘、7本塁打、18打点、8盗塁。真夏に快音を響かせて2年ぶり3度目のトリプルスリー(3割、30本、30盗塁)を射程圏内にとらえるが「夏に強い? よく言われるんですけど、なんでなんですかね」と苦笑いした。
それでも「夏男」ぶりは数字が雄弁に物語っている。
7月9日の巨人戦ではプロ初のサイクル安打を達成。自身初の4試合連続アーチも描き、球団タイ記録の9試合連続打点をマークして7月を終えた。チームは7連勝を飾るなど、2位で8月を迎えたこともあり「勝っていると疲れも感じない。体は動いていますね」と表情も明るい。
「夏バテ対策の秘訣をあえていうなら」
特別暑さに強い、というわけではない。ご多分に漏れず、山田哲も今年の猛暑に「やばい。もう無理」と悲鳴を上げている。なのに夏バテとは無縁だ。
秘訣(ひけつ)を探ろうと練習に打ち込む姿を見ていると、その理由の一端がかいま見えた。一時は代名詞のようになっていた「11種類のトス打撃」を封印していた。
トリプルスリーを達成したころ、技術向上とスイング軌道を整えるため、ワンバウンドや真後ろから投げられた球などを打ってから、マシン打撃に取り組んでいた。今は違った。他の選手と同じように、右斜め前からトスされたボールを打つメニューに限定。練習でのスイング数も減らしていた。そこには好調を維持するための、山田哲なりの明確な意図があった。
「トス打撃も11種類はやっていないです。疲れを取るというよりも、いかに体力をキープできるかが大事だと思うんです。夏バテ対策の秘訣をあえていうなら、休むことですかね。5年間、試合に出続けていますからね。体調管理は大事」