“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
酒井宏樹が右SBを天職にした理由。
縦の信頼関係と謙虚さ、獰猛さ。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/07/02 18:00
柏の下部組織時代からサイドバックとして育成された酒井宏樹。ベルギー戦ではマッチアップが予想されるアザールを止められるか。
激しいデュエルを求められる中で。
マルセイユは熱狂的なサポーターを持つクラブとしても世界的に名を馳せている。フランス国内でも治安が良くないとされるマルセイユのウルトラスは過激であり、スタジアムの雰囲気を味方につけられればこれほど心強いものは無いが、試合の結果に対してシビアな分、いざ敗戦したとなるとスタジアムに異常な緊張感が漂うことになる。
ちなみに、リーグ・アンのフィジカルコンタクトの激しさはヨーロッパ各国リーグの中でもトップクラスで、180cm~190cm台の屈強な選手達がスピーディーな展開の中で、常に激しいデュエルを各局面で繰り広げているのは、観客としてみれば見応えたっぷりである。
松井大輔のように相手のパワーをいなせる相当なテクニックを持っているか、酒井宏のように高い身体能力とサイズ、そして球際の強さと運動量がなければ、リーグ・アンでは生きてはいけないのである。
日本におけるリーグ・アンは、リーガ・エスパニョーラやプレミアリーグ、ブンデスリーガなどと比べてメジャーではないかもしれないが、世界トップレベルのタフなリーグであることは間違いない。
謙虚かつ真摯に、獰猛さを発揮して。
そんな環境で酒井宏は驚くべきスピードで順応し、今や名門マルセイユに欠かせない不動のサイドバックとして君臨しているのである。
フィジカルレベルもドイツ時代から飛躍的に向上し、過激なデュエルの繰り返しの中で、冷静に“どうしたら周りに活かされるか”を考えながら、最適なプレーを選択する頭の回転の速さも磨いてきた。
今の酒井は、そのリーグ・アンで培った力をロシアの地で存分に示している。
不動の右サイドバックとしてグループリーグ3試合すべてフル出場。決勝トーナメント初戦のベルギー戦でも、これまでと変わらぬ活躍が期待される。