サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
日本らしさを表現し尽した90分間。
この敗戦がいつか大きな財産になる。
posted2018/07/03 11:50
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
この衝撃をなんと表現したらいいのだろう。
W杯とは、こんなにも残酷な舞台なのか。
「2年前の二の舞になるかと思った」
マンオブザマッチが登壇する試合後の記者会見で、ベルギーのエデン・アザールはそういって安堵の表情を浮かべた。2016年のEUROの準々決勝で、彼がキャプテンを務めるチームはウェールズに1-3で敗れている。
7月2日のロストフ・アリーナのピッチで、27歳の背番号10は伏兵に足をすくわれた記憶を思い起こしていた。
もっとも、敗戦を覚悟したわけではない。「1点取ればまだいける」との思いに奮い立つ。指揮官ロベルト・マルティネスもまた、決定機を逃し続けるチームに強烈なカンフル剤を打ち込む。65分、マルアン・フェライニとナセル・シャドリの2枚替えに出るのだ。
ピッチ上の色彩が、ここから一気に変わっていく。
ベルギーの圧力に抗い、攻め返した前半。
ベルギーのベンチが動くまで、ゲームの主導権は日本にあった。前半から激しい圧力を受けるものの、相手のフィニッシュに身体を投げ出してブロックする。1人ではない。2人、3人がシュートコースを消した。
守るだけではない。3-4-2-1のシステムが内包する両ワイドのスペースを、右からは酒井宏樹と原口元気が、左からは長友佑都と乾貴士が臆せずに突いていく。グループリーグの1、2戦と同じメンバーが、コロンビアとセネガルを相手に見せた意欲的なサッカーでベルギーのゴールに迫っていた。
ポーランド戦の残り10分がもたらした負のイメージは、前半終了時点で払拭したと言っていいだろう。