ロシアW杯PRESSBACK NUMBER
世界に君臨したドイツ時代の終わり。
前回王者はなぜ韓国に敗れたのか。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2018/06/28 11:50
日韓W杯以降、ドイツ大会のブラジルをのぞいて前回王者はグループリーグで敗退している。ドイツもその罠にはまってしまった。
韓国もCBを中盤で使う斬新な布陣。
そもそもロシアワールドカップにおけるドイツは未だに最適な布陣を見定められず、それがグループリーグでの苦闘の要因になっていた。しかし第2戦のスウェーデン戦で劇的に勝利し、第3戦は今大会で勝ち点をひとつも得られていない韓国が相手とあって、ドイツ国内は楽観ムードに包まれていた感がある。
かたや韓国も斬新な先発メンバーで構成されていた。第2戦のメキシコ戦で左ふくらはぎを負傷したキャプテンのキ・ソンヨンが欠場し、その代わりにはヴィッセル神戸所属のチョン・ウヨンを据え、ダブルボランチのパートナーにはなんと、2戦連続でセンターバックを務めていたチャン・ヒョンスを抜擢したのだ。
チャン・ヒョンスは2試合を通してミスが続き、メキシコ戦ではペナルティエリア内で相手にスライディングタックルを仕掛けた際に相手の蹴ったボールが手に当たってハンドを宣告され、PKを与えてしまった。韓国国内でのチャン・ヒョンスに対する風当たりは強く、ドイツ戦での先発落ちも示唆されたが、シン・テヨン監督は守備の要である彼をあえてひとつ前のポジションで起用した。
その意図は試合開始直後から明らかとなる。韓国は攻撃時こそ4-4-2のシステムだが、守備に回ると2トップの一角であるク・ジャチョルが中盤まで降りてきてチョン・ウヨンと共にボランチの一翼を担い、逆三角形の頂点にチャン・ヒョンスが入る4-1-4-1でドイツの中央攻撃を防いだ。
ポゼッション率はドイツが70%だったが……。
ドイツはケディラ、クロースのダブルボランチがゲームをコントロールし、トップ下のエジル、右MFのゴレツカ、左MFのマルコ・ロイスが中央に集結して攻撃を仕掛け、サイドバックのヨシュア・キミッヒとヨナス・ヘクターのオーバーラップを促す。そんな相手の攻撃メカニズムに対して、シン・テヨン監督は明確な対策を施したのである。
モスクワから東に800キロ離れた位置にあるカザンは、午後4時の段階で気温が27度まで上がっていた。その影響かは分からないが、ドイツの選手たちの出足が鈍い。また、パススピードも鈍重で、緩慢さが際立った。
一方の韓国は専守防衛の構えだが、前線のソン・フンミンを中心に走力を備えた面々が揃っている。試合を通してのポゼッション率はドイツの70パーセントに対して韓国は30パーセントと圧倒的な差がついたが、韓国はボール保持率を相手に譲り渡しても対抗できる術を有しているわけで、戦況はどちらが優位とは言い難かった。