“Mr.ドラフト”の野球日記BACK NUMBER
“黄金時代”の隣に“暗黒時代”はある。
プロ野球球団、新陳代謝の難しさ。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2018/06/22 16:30
ベンチ内で難しい表情の工藤公康監督とチーム首脳陣。チームの新陳代謝をどこまで意識しているだろうか……。
日本ハムならもっと起用されるのでは?
たとえば、ソフトバンクの高橋純平('15年1位)や田中正義('16年1位)は、日本ハムならばもっと起用されている、と想像できないだろうか?
大学卒のドラフト1位・東浜巨を5年目に最多勝を獲るほどの主戦投手に育て上げ、社会人出身のドラフト1位・加治屋蓮を5年目の今年、リリーフ投手の“勝利の方程式”に組み入れたという、ソフトバンクの育成力には本当に頭が下がる。
それでも6、7割の仕上がり状態でまずは一軍に上げるという育成法も、あってもいいのではないかと思ってしまう。
中日と巨人に見る、衰退のきっかけ。
日本球界の歴史を振り返ってみると、球団の育成能力を過信する、あるいはすでに在籍している若手の潜在能力に過度に期待するあまり、その後のチーム成績が停滞してしまった例がある。
中日は落合博満監督が指揮を執った2004~'11年にリーグ優勝4回、日本一1回(2位からクライマックスシリーズを勝ち上がって日本シリーズを制す)という黄金時代を築くが、この時期、即戦力としての社会人を中心としたドラフト戦略を展開し、2013年から2017年まで5年連続Bクラスに低迷するという遠因を作っている。
落合監督の、ドラフトの順位は関係ない、プロ入り後の練習がすべてという考えが、自分が育った社会人重視のドラフトに繋がっていったのではないだろうか。
巨人は1965年から'73年まで前人未到の日本シリーズ9連覇、いわゆるV9を成し遂げるが、2年後の'75年には球団史上初となる最下位に沈み、日本シリーズの連覇は'73年以降の44年間で一度も達成していない。
「入りたい球団に入れないドラフト制度は、基本的人権を侵害しているのではないか」という言い分は渡邉恒雄元オーナーの口癖だ。
'70年代には「多摩川グラウンド(かつての巨人の二軍施設)にはドラフト1位クラスの逸材がひしめいている」(渡邊)という発言が雑誌に載ったこともある。
大昔の巨人が、いかにドラフトときちんと向き合っていなかったか……これらの発言は、それを証明していると思う。