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ハンブルガーSVが史上初の2部降格。
ブレーメンの音楽隊は、なぜ大喜び?
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2018/06/01 08:00
酒井高徳らの奮闘もむなしく初の2部降格となったハンブルガーSV。ライバルのブレーメンにとっては朗報のようで……。
ブレーメンがHSV降格を願っている?
そんな状況が一変したのは、試合開始直後にスタジアムビジョンが他会場の得点経過を告げたときです。
ヴォルフスブルクが、すでに最下位で降格が決定しているケルンを相手にジョシュア・ギラボギのゴールで先制! その瞬間、アウェーのブレーメンサポーターがこの日一番の大声を発して狂喜乱舞し始めたのです。
訳が分からない僕は、記者席でひとり頭上に?マークを浮かべていたのですが、徐々に状況を理解し始めました。16位・ヴォルフスブルクは17位・ハンブルクと勝点2差で残留争いを繰り広げるチームです。
あれ? もしかして……。この会場にいる人たち、ヴォルフスブルクが勝ってハンブルクが2部に降格することを願ってる?
このときの僕は知りませんでした。ハンブルクとブレーメンが熾烈なライバル関係にあることを。
仲良しな都市がサッカーでは一変。
ハンザ同盟ってご存知ですか?
ヨーロッパ中世後期に北ドイツを中心にバルト海沿岸地域の貿易を独占して、ヨーロッパ北部の経済圏を支配した都市同盟のこと(だとか)。世界史に疎い僕は、これを聞いても全然ピンときません。
まあ、ものすごく大雑把に説明すると、昔の地域間を交易する商人の組合団体のことらしいです。そのなかでハンブルク、そしてブレーメンはバルト海沿岸地域の貿易上欠かせない都市として重要視され、今でも正式名称はそれぞれ「自由ハンザ都市ハンブルク」、「自由ハンザ都市ブレーメン」となっています。
ちなみに、両都市はいずれも港湾都市ですが海に面しておらず、ハンブルクはエルベ川河口から約100キロ、ブレーメンはベーザー川河口から約60キロ内陸にあります。で、この両都市はかなり古くから関係性を持ち、お互いの利点を尊重しつつ協力関係を築いてきたわけです。つまりは、むしろ仲が良かった。
しかし、それがブンデスリーガの舞台になると様相が一変します。元々ハンブルクにはハンブルガーSV以外にザンクトパウリという地元クラブがあって、この両クラブは激しいライバル関係にあるのですが、ザンクトパウリは大半を2部以下で戦っているので、トップカテゴリーでダービーマッチが行なわれる機会は稀なのです。