嬉しそうに「Zweiteliga HSV！」

　目前では、あなたたちが愛するマインツとブレーメンの選手たちが必死に戦っているのです。あっ、ディボク・オリジがゴールゲットして再びヴォルフスブルクがリード。オペル・アレナの盛り上がりは最高潮。目の前の試合は1－1で拮抗しているのに、スタンドの熱気は異なるベクトルへ放散されています。

　何なの、これ？　やばい！　ロビン・クノッへがゴールして、ヴォルフスブルクがケルンを突き放しちゃった。アディショナルタイムにヨシプ・ブレカロが4点目を決めたことなんて、もう関係ありません。ハンブルク、クラブ史上初の2部降格。それを最も喜んでいたのは、もしかしたら、ここマインツにいるブレーメンサポーターだったのかもしれません。

　ブレーメンがマインツを2－1で下した試合後。スタジアムを出た僕はシャトルバスに乗ってマインツ中央駅へ向かっていました。運良く座席を確保して座れたのもつかの間、僕の周りを取り囲んだブレーメンサポーターが一斉に“あのフレーズ”を奏でます。

「Zweiteliga HSV！」「Zweiteliga HSV！」

　はい！　そこの君も唱和して！　はい！　はい！

　ダメだ……、逆らえない……。高徳選手、伊藤達哉選手、本当に申し訳ありません。狂乱のシャトルバスのなかで、周囲の喧騒に包まれた僕は無慈悲にも「Zweiteliga HSV！」と連呼して、もみくちゃにされながら「祝杯だ！」といって頂いたビールを一気飲みしてしまいました。

　それにしても、約537キロ離れた（google map調べ）地からハンブルクの行末に思いを馳せるなんて想像だにしませんでしたよ、本当に。ブレーメンサポーターが嬉々とした表情で絶叫するなか、必死にスマートフォンでネットサーフィンしながら両都市、両サポーターの関係を知り得た僕は、「今日は一体、何の試合を観たんだっけ？」と、月夜に照らされた赤ら顔で、物思いにふけったのでした。