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ハンブルガーSVが史上初の2部降格。
ブレーメンの音楽隊は、なぜ大喜び?
posted2018/06/01 08:00
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Getty Images
2017-18シーズンのドイツ・ブンデスリーガは、バイエルン・ミュンヘンが2位シャルケに勝点21差をつける圧巻の強さで、前人未到の6連覇を達成しました。あまりの常勝ぶりにドイツのサッカーファンもさすがに興ざめした印象で、来季の各クラブの観客動員にも何らかの影響があるのではと懸念されています。
シーズン終盤に優勝争いの興味が薄れたなか、現地の方々が注目したのは残留争いの行方でした。特にブンデスリーガが創設されて以降54年もの間1部に在籍し続けた唯一のクラブ、ハンブルガーSV(以下、ハンブルク)が2部降格の危機に瀕する状況は人々の関心を集めました。
近年のハンブルクは下位に低迷し、常に残留争いを強いられてきました。昨季からチームキャプテンを務める酒井高徳選手は「初めてHSVを降格させたキャプテンにはなりたくない」と言っていましたが、今季もまた、その厳しいサバイバルマッチに身を投じなければならなかったのです。
1部在籍の時計を示すボードと酒井高徳。
高徳選手は、こうも言っていました。
「HSVのスタジアムにはクラブが1部に在籍している時間を示すボードが掲げられているんです。もしチームが残留争いに敗れて2部に降格したら、あの時計は時を刻まなくなる。だから、絶対にあの時計を止めてはならないと思いながらプレーをしています。ホームゲームでは常にピッチの上で、あの時計ボードを見ていますから、逆にそれがプレッシャーになることもありますけどね(笑)」
選手の緊張はサポーターにも伝わります。リーガ終盤戦におけるハンブルクの動向は常にトップニュース扱いで、悪い意味で露出度が高いので、ハンブルクサポーターはホームでもアウェーでも何だかイライラしていました。
2018年5月5日のブンデスリーガ第33節。フランクフルトの街中は何だか不穏な空気に包まれていました。アイントラハト・フランクフルトのホームであるコンメルツバンク・アレナへ向かう途中のフランクフルト中央駅に着くと、いきなり窓ガラスが「ガシャーン」と割れる音が……。