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ハンブルガーSVが史上初の2部降格。
ブレーメンの音楽隊は、なぜ大喜び?
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2018/06/01 08:00
酒井高徳らの奮闘もむなしく初の2部降格となったハンブルガーSV。ライバルのブレーメンにとっては朗報のようで……。
眼前のライバルが必要だったから。
つまり、一度も2部に降格したことのなかったハンブルクにとっては、眼前のライバルが必要だった。そこで共にブンデスリーガ創設の1963年から在籍し、地理的に約95キロ離れたブレーメンに目をつけたわけです。諸説あるので断定はできないのですが、サッカーの世界では対抗意識を芽生えさせる相手がいなくては盛り上がりに欠けるという観点から、いつしか両クラブのサポーターは激しいライバル意識を抱くようになったのですね。
現在、ハンブルクとブレーメンの対戦は「ノルト・ダービー」と呼ばれています。北ドイツの覇権を争うゲームとして、ドルトムントvsシャルケの「ルール・ダービー」と並んでドイツ国内有数のダービーマッチとして認識されています。
この対戦カードには悲しい歴史もありまして、1982年10月17日にハンブルクで行なわれたダービーでサポーター同士の小競り合いが発生し、一方から投げつけられたレンガを後頭部に受けたブレーメンサポーターの方が亡くなった一件がありました。これはドイツ国内で、サッカーにおける暴力が原因で死者が出た初めてのケースでした。
堅苦しい話になってしまいましたが、ここでようやく、マインツにいるブレーメンサポーターが今季最終節の結果によって決まる、ハンブルクの行く末に一喜一憂している理由がお分かり頂けましたでしょうか。
ケルンが追いついたら、しらけムード。
この間、ハンブルクvs.ボルシア・メンヘングラッドバッハはハンブルクがリードを奪う展開が続いていました。でも、この時点でハンブルクよりも上位のヴォルフスブルクが当該相手のケルンを下せば、ハンブルクの2部降格は決定です。
32分、ヨナス・ヘクターがゴールを決めてケルンが同点に追いつくと、オペル・アレナは一転してしらけムード。いやいや、皆さん、目の前の試合に集中しましょう! ここはラインラント・プファルツ州の州都、荘厳な司教座聖堂がそびえる悠久の古都マインツですよ!