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ハンブルガーSVが史上初の2部降格。
ブレーメンの音楽隊は、なぜ大喜び?
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2018/06/01 08:00
酒井高徳らの奮闘もむなしく初の2部降格となったハンブルガーSV。ライバルのブレーメンにとっては朗報のようで……。
駅構内で派手な乱闘が始まると……。
その瞬間、複数の怒声と共にオープンカフェのテーブルや椅子が空中を飛び交い、周囲の飲食店やお土産屋さんの店舗シャッターがあっという間に閉まりました。このあたりは従業員の方も慣れたもの。
そう、些細なことでフランクフルトサポーターとハンブルクサポーターが口論となり、駅構内で派手な乱闘劇が始まったのです。ただし、狼藉を働いた彼らがただで済むはずもありません。逞しい体躯に重装備を纏ったPolizei(ポリス)の皆さんが一斉に取り囲み、警棒を振りかざして彼らをボコボコ。まあ、その後の詳細は割愛しますけども。
肝心のゲームはと言うと、3-0でホームチームが圧勝。前回のコラムで記したアレクサンデル“フッスバルゴット”マイアーが感動的なダメ押しゴールを決めて、フランクフルトサポーターが至福の時を過ごしました。一方、ハンブルクはついにリーガ1試合を残して2部降格にリーチが掛かったのであります。
「ハンブルクは2部!」の優越感。
その帰路で、フランクフルトサポーターが勝利の凱歌を奏でると共に唱和していた、あるフレーズが耳に残りました。
「Zweiteliga、HSV!」
多くの方々が嬉々とした表情で「ハンブルクは2部!」と叫んでいるのです。人の不幸を嘲笑するのは良くない行為だとは思いますが、それでもとっても楽しそう。この時点ではまだハンブルクの2部降格は決まっておらず、単純に勝利チームが優越感を覚えているのだろうな、としか思いませんでした。
5月12日、ブンデスリーガ最終節。僕は武藤嘉紀の所属するマインツのホーム、オペル・アレナでマインツvs.ブレーメンを取材しました。
マインツは前節でボルシア・ドルトムントに勝利して1部残留を決め、ブレーメンもすでに中位フィニッシュが確定。最終戦は、いわば両チーム共に労をねぎらう消化試合的な雰囲気が漂っていました。その証拠に、試合開始前のスタジアムに殺伐とした空気はなし。春の麗らかな青空が広がる午後の日差しを浴びながら、両サポーターはまるで互いに肩でも組むようにそれぞれのチームへ温かな声援を送っていたのでありました。