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ベンゲルの育成力はいつ錆びたのか?
アーセナルで潰れた有望選手たち。
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byPierre Lahalle
posted2018/05/01 11:00
何度かの怪我に襲われたジャック・ウィルシャーだが、今季は好調。だが、6月の契約更新をまだ了承していない。
負傷が原因? それとも……。
ダニー・ウェルベックは、2014年まではマンチェスター・ユナイテッドで充実したシーズンを送っていた。最後のシーズンとなった2014年には25試合に出場し9得点している。移籍後の“ガナーズ(砲撃手/アーセナルの愛称)”時代となると、4年間で14得点であり……ずいぶん成績を落としていると言える。
アーセナルは選手の負傷が多いことでも有名だが、それだけですべてを説明しきれない。
では他に何があるのか?
監督と選手の信頼の問題なのか?
そうだとすれば、どうして信頼が失われてしまったのか?
ベジェリン、ウォルコットら消えた逸材たち。
バルセロナの育成育ちで将来を嘱望されたエクトル・ベジェリンは、2年前にはプレミアリーグ年間ベスト11に選出されながら、2016年の後はスペイン代表に招集されていない。
持ち味であるスピードが、鈍くなっているのがその理由であるのかも知れない。同様に代表から遠ざかっているセオ・ウォルコットにも同じことがいえる。ジムで筋力トレーニングをやり過ぎた結果なのか?
ウォルコットはアーセナルで少なくとも100ゴールはあげるだろうと期待されていた逸材のはずだ。
実際、2012~13年シーズンには43試合に出場し21得点を記録している。だが、彼もまた最悪のタイミングで深刻なフィジカルトラブルに何度も見舞われている。そして30歳を前にして、サム・アラダイス監督率いるエバートンへと移籍したのだった。
フランシス・ジェファーズのように、ベンゲルには直接責任がない失敗例もある。彼の場合はプロサッカーが求める身体の強さをそもそも持っていなかったのだから。
だが、そうした例は皆無とは言わないまでも、とても少ないと言えるだろう。やはり、現在のアーセナルには若い才能を伸ばし切れない何らかの理由があるのだ。