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ビエルサも魅了、天才アイマール。
W杯でアルゼンチン代表をサポート。
posted2018/04/30 11:30
text by
藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia
photograph by
Getty Images
「El final es en donde parti(終わりは自分の出発点で)」
これはアルゼンチンのロックバンド『La Renga』の有名な歌のタイトルであり、今年1月、故郷リオ・クアルトのクラブ、エストゥディアンテスの一員として現役最後の試合に出場した、パブロ・アイマールのユニホームに刻まれていた言葉でもある。
「親善試合ではなく公式戦を最後の試合にしたい」という希望と、「弟アンドレスと公式戦で一緒のピッチに立ちたい」という想いを叶えるため、アイマールは自分がサッカー選手としてキャリアをスタートさせたローカルクラブを選んだ。
試合は全国規模の大会、コパ・アルヘンティーナの地方予選だった。
リオ・クアルトから世界へ羽ばたいていった名手の最後。その瞬間を見逃すまいと集まった地元の人々によって、1万5000人収容のスタジアムは超満員となった。
アイマールの引退試合に現れたビエルサ。
そのなかには、あのマルセロ・ビエルサの姿もあった。世界でも指折りのサッカーマニアとして知られるビエルサは、車で数時間の距離を駆けつけ、誰にも知らせずにひっそり、あくまで1人の観客として試合を見た。
観客席からアルゼンチン代表で指導したかつての“教え子”に拍手を送るビエルサに誰もが驚いたが、これはアイマールが、ビエルサほどのサッカー狂をも虜にする才能の持ち主であったことを改めて立証する逸話と言っていい。
キャリアを終える場所に自分の出発点を選んだアイマールだが、古巣リーベル・プレートで引退する構想がなかったわけではない。
2015年1月、マレーシアのクラブからリーベルに復帰。花道を飾るために、キャンプでのハードなトレーニングもこなした。しかし、2月に右足首を手術。3カ月の療養とリハビリを経て、5月31日のロサリオ・セントラル戦で途中出場を果たした。15年ぶりに、リーベルの選手としてエスタディオ・モヌメンタルのピッチに立ったのである。
出場は20分だったが、まったく衰えを感じさせないパスセンスを見せたうえに股抜きまで披露して、サポーターから拍手喝采を送られた。