欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
起用法を巡る騒動は世界でも日常的。
騒動の主役がハリル、なのが寂しい。
posted2018/05/02 11:30
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
物語のクライマックスを前に、パタリと本を閉じられてしまった気分なのだろう。
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の日本代表を、ロシアの地で見たかったと嘆く人たちのことだ。
午前零時の鐘の音に慌ててお城を飛び出したシンデレラは、その後どうなってしまうのか?
突然ストーリーを打ち切られたことに、たくさんの人が戸惑い、不満の声を上げている。
けれど、想像してみるといい。続きはきっと、バッドエンドだ。王子様がシンデレラを見つけ出すことも、ガラスの靴がピタリと足にはまることもなかっただろう。
極めて日本人的なオブラート。
ハリルホジッチ前監督の志向していたサッカーは、簡単に言ってしまえば日本人向きではなかった。
アッパーにもソールにも、新しい素材を使ったランニングシューズ。もしかしたら、これまでとは違った走りができるかもしれない。実を言うとサイズがちょっと合わなくて、練習では靴擦れもできてしまったけれど、まあ、なんとかなるだろう――。
そんなアバウトな感覚で、選手をレースに送り出してはならない。大きな怪我をする前に、たとえ本番直前であってもシューズを履き替えられて良かったと、そう思っている。
「コミュニケーション不足と信頼関係の薄れ」
日本サッカー協会の田嶋幸三会長が述べた解任理由についても、根拠が明確ではないと批判の的となっている。
誰もが気付いているのにはっきりと口にしないけれど、要するに監督と何人かの選手の間に確執があったのだろう。それをコミュニケーション云々と、極めて日本人的にオブラートに包もうとするから分かりにくくなるし、ハリルホジッチ前監督もわざわざ独演会まで開いて全面否定したくなるのだ。