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ベンゲルの育成力はいつ錆びたのか?
アーセナルで潰れた有望選手たち。
text by
フィリップ・オクレールPhilippe Auclair
photograph byPierre Lahalle
posted2018/05/01 11:00
何度かの怪我に襲われたジャック・ウィルシャーだが、今季は好調。だが、6月の契約更新をまだ了承していない。
ベンゲルは才能の発掘に定評があったはず……。
エミレーツ・スタジアムへの本拠地の移動を決めて以来アーセナルは、移籍市場でそれまでのような競争力を失っていた。
とはいえベンゲルは才能の発掘には定評があり、育成コーチとしても超一流の評価を得ていた。ティエリー・アンリを開花させ、パトリック・ヴィエラやニコラ・アネルカを目覚めさせたベンゲルに惹かれて、ロビン・ファンペルシやセスク・ファブレガスらが次々と彼のもとに身を寄せた。
それはプレミアの他のどの監督も持ちえない、ベンゲルの大きなアドバンテージだった。
5年半の歳月が流れ、希望に溢れていた写真は、今は痛みと苦い思いばかりを喚起する。
選手たちの運命も、またクラブ自身の運命も、彼らが望んだようにはならなかった。5人のうち今も代表に残っているのはひとりアーロン・ラムジーだけである。
今のアーセナルは有望な若手を育てられない。
“ジ・オックス/雄牛”(オクスレイドチェンバレンの愛称)は6年に及ぶフラストレーションの溜まるシーズンを送った後に、リバプールへと移籍した。残る3人はレンタル移籍と完全移籍、度重なる負傷で表舞台から遠ざかっている。
彼らの中で最も才能に恵まれていたジャック・ウィルシャーは、秋にクラブへのカムバックを果たした。しかし将来の攻撃の大黒柱と期待されたイングランド代表チーム、その監督のガレス・サウスゲイトからは復帰後まだ1度も呼ばれていない。
彼らはいずれも当初は多大な期待をかけられながら壁に直面し、乗り越えることができずに伸び悩んだり、退歩した。
彼らに限らずこのところのアーセナルは、有望な若手を獲得しながら育てきれていない。選手の側から見切りをつけてクラブを離れていった例も少なくない。これは偶然なのか、それとも選考や育成のプロセスに何か問題があるのか……。