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森保監督と東京世代、目標は高く。
「“おめでとう”の言葉を目指して」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2018/04/09 07:00
サンフレッチェ広島を3度のJ1制覇に導いた森保一監督。東京五輪世代を率いる冒険に期するものがある。
「人生いいことばかりじゃないよ」
退任してから森保は実家のある長崎に一度戻った。急速に流れていた時間は「ゆったり」に変わった。少年のころ通った学校や練習場所に足を運んでみた。「ボーッとした時間」が、気持ちをニュートラルに戻していく。自分に何が足りなかったのかを冷静に振り返ることもできた。
「広島ではあらゆる経験をさせてもらうことができました。今回のことはネガティブな意味ではなくて、この経験を次にどう活かせるかという視点で考えるようになりました。(サンフレッチェが)変化していくなかで、うまく対応できなかったところがあったかもしれない。“人生いいことばかりじゃないよ”と教えられた気がします」
気持ちは次へと向かっていた。
オーストラリアでは元同僚と意見をかわし。
わずかな充電期間を終えると、監督修行のために海外に飛び出していく。
最初に向かったのがオーストラリアだった。現役時代に広島でチームメイトだったトニー・ポポビッチが指導するウェスタン・シドニーを訪れた。ポポビッチからは「通訳をつけないで一人で来てくれればいい。大事なのはサッカー。言葉は二の次だ」と言われ、そのとおりにした。
'14年にACLを制すなどAリーグを代表する監督になった彼のミーティングにも顔を出して、英語の細かいニュアンスまでは分からなくとも「伝え方」「伝わり方」で感じたことは多かった。
続いてニュージーランドに渡り、州リーグ1部でチームを初優勝に導いた宮澤浩を訪ねた。彼も元同僚。育成システムの構築まで携わり、周囲から絶大な信頼を集めていた。結果を出している同僚たちから、痛いぐらいの刺激をもらった。「大役」を受け入れる覚悟と挑戦の後押しとなった。
自国開催の東京五輪はメキシコ大会以来のメダル獲得が至上命令となる。
東京世代には堂安律(フローニンゲン)、小川航基(ジュビロ磐田)、A代表に選出された初瀬亮(ガンバ大阪)……下の世代にも久保建英(FC東京)たち将来を有望視されるタレントがひしめいている。