ROAD TO THE DERBY 2018BACK NUMBER
新人調教師がいきなり挑むクラシック。
ケイティクレバーと安田翔伍の“縁”。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2018/04/04 07:30
35歳と調教師としては若手に入る安田翔伍氏だが、馬とのつき合いは長い。いきなりのクラシック制覇が実現するのだろうか。
社台ファームでの研修で見つけた若馬。
翻意したことで調教師試験を受験すると、3回目で合格した。
昨年は1年間、技術調教師という立場で、馬房がまだ貸与されない調教師となった。この間の過ごし方は人それぞれ。翔伍は一時期、社台ファームで研修した。その際、千葉セリに上場する若馬の調教をつけた。その中に、“これは!!”と思える馬が3頭いた。
「そのうちの1頭を、父の厩舎にいた頃から親しくさせていただいていた原(禮子)オーナーがセリで落としてくださいました」
それがオメガパフュームだった。同馬は一旦、父の隆行厩舎で預かった後、翔伍の開業と同時に転厩。
開業した週の日曜日に3歳500万下条件に出走させると優勝。早くも調教師としての初勝利をプレゼントしてくれた。
さらに3週間後の3月25日にはレイリオンが18頭立て12番人気という人気薄で快走。単勝93.2倍で1着となり、開業して1カ月と経たないうちに両目を開ける勝利をマークしてみせた。
「馬だけの時間も作ってあげる」
「開業したら『考えていたことの半分も出来ない』と先輩方から聞いていましたが、僕はスタッフに恵まれたのか、結構、考えていた通りにやらせてもらっています」
父の厩舎で働いている時に、多くのスタッフをみてきた。そして気付いたことがあった。
「心配性で時間をかけて馬の世話をする人と、効率的に馬に接している人とでは、馬の性格が違うことに気付きました。後者の方が馬はカッカせず、人懐こくなるんです。ロードカナロアがまさにそうでした」
だから従業員には「馬にべったりくっつくのではなく、馬だけの時間も作ってあげるようにしてください」と伝えているという。それが調教師とスタッフ、そしてスタッフと馬、ひいては調教師と馬との関係を良くしていくのだと若き指揮官は考えている。
さて、来週末、皐月賞に臨むケイティクレバーである。冒頭に記したようにこれが転厩初戦となるが、実はこの転厩は必然だったのでは? と思える偶然が、安田と同馬の間にはあった。