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大阪杯を支配したミルコ・マジック。
圧倒的な道中のポジション取り技術。
posted2018/04/02 11:20
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Kyodo News
満開の桜のもと、変幻自在の「ミルコ・マジック」で、最強世代の一頭が「キタサンロス」を吹き飛ばす強さを見せた――。
春の「古馬三冠」の第一弾、第62回大阪杯(4月1日、阪神芝内回り2000m、4歳以上GI)を、ミルコ・デムーロが騎乗する1番人気のスワーヴリチャード(牡4歳、父ハーツクライ、栗東・庄野靖志厩舎)が優勝。GI初勝利を遂げた。2着のペルシアンナイトも、3着のアルアインも「最強世代」と呼ばれる明け4歳馬だった。
15番という外枠から出たスワーヴリチャードは、後方2番手につけて向正面に入った。16頭の馬群はゆったり流れ、前半1000m通過は61秒1。この遅い流れで後ろにいては不利と見るや、デムーロは動いた。
向正面半ば過ぎでスワーヴリチャードを外に持ち出してスルスルとポジションを上げ、3コーナーを回りながら先頭に並びかけた。
ここで勝負は決した。
着差以上に危なげない勝利だった。
デムーロが、道中で大きくポジションを上げる戦術をとったのは今回が初めてではない。
ヴィクトワールピサで制した2010年の有馬記念も、翌'11年のドバイワールドカップも、同様の戦術で栄冠を勝ち取った。
内回りコースで外枠を引いたことで距離ロスを心配されていたが、向正面の直線で外を走るぶんにはコースロスをすることはない。
また、4着だった昨年の有馬記念の直線で内に斜行したように、右回りでは内にモタれる癖があることも懸念材料だったのだが、その対策もぬかりなかった。
4コーナーで早めに先頭に立って内ラチ沿いを走り、あえて馬にラチを頼らせることによって、まっすぐ走らせたのだ。このように、近くでラチを見ることによってレースに集中したり、スタミナを失わずに走ることのできる馬は案外多い。
レース前、デムーロが「手前の替え方も上手になっている」と話していたように、直線入口でスムーズに左手前に替えた。ゴール前でまた手前をスイッチし、最後の10完歩ほどは右手前で走っていたが、体幹がブレることはなかった。
外からペルシアンナイト、アルアインの池江勢が追い込んできたが、余裕を持ってフィニッシュ。2着ペルシアンナイトとの3/4馬身という着差以上に危なげない勝利であった。