今日も世界は走っているBACK NUMBER
女子マラソン、東京五輪の切符争い。
関根花観が見せた挑戦する者の強さ。
posted2018/03/15 07:30
text by
金哲彦Tetsuhiko Kin
photograph by
EKIDEN News
名古屋ウィメンズマラソンの参加ランナーは2万2千人。
今年も、世界最大の女子マラソンとしてギネスにも堂々認定された。そして2万2千の頂点を争うエリートランナーのレースから若きヒロインが誕生した。
東京マラソンで設楽悠太(ホンダ)が日本新記録をだしてから、マラソン界では「日本記録」のキーワードが広まっている。
なにしろ、日本新記録に与えられる1億円のインパクトはでかい。当然、「男子の次は女子?」という期待の声も大きくなっている。
ところが、名古屋ウィメンズマラソンのレース2日前に行われた記者会見でその話題はほとんどでなかった。
前田彩里(ダイハツ)、小原怜(天満屋)、清田真央(スズキ浜松AC)など錚々たる顔ぶれの招待選手たちが言葉にした目標は記録への挑戦ではなく「MGCの権利を獲得したい」だった。
守るものがない選手たちが。
2020年東京オリンピックのマラソン代表選考レースであるマラソングランドチャンピオンシップ(略称MGC)への出場権は、オリンピックを目指す長距離選手にとって避けることができない第1関門だ。
名古屋ウィメンズマラソンでのMGC条件は、日本人3位以内で2時間28分以内、または日本人6位以内で2時間27分以内となる。
つまり、主力招待選手にとっては自己記録よりかなり遅いタイムということになる。
さらに、25キロまでペーサーが引っ張ってくれるので自ら仕掛けを考える必要もない。
レース前から日本人の中での順位さえ気にしていればいいという、守勢になりがちな雰囲気がみられたことは事実だ。
そして結果は、期待された実力者たちではなく、守勢になる理由をもたない選手たちにMGCがもたらされたのだ。
今回MGCを獲得したのは、ハーフマラソンの経験さえない初マラソンの関根花観(せきね はなみ/日本郵政グループ)、コーチとともに実業団を飛び出し、結果を残さなければ後がない危機感をもって走った岩出玲亜(いわで れいあ/ドーム)、ベテラン実業団選手として自己記録に挑戦した野上恵子(十八銀行)の3名だ。