球体とリズムBACK NUMBER
マリノスの超前衛戦術は実を結ぶか。
“偽SB”山中亮輔が語る怖さと自信。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2018/03/06 10:30
典型的なサイドバックだった山中亮輔が、今季は中央にも入り込んでプレーしている。マリノスの挑戦は実を結ぶか。
「ああそういう意図だったのか」という気づき。
あの開幕戦のゴールについては、こんな風に謙虚に振り返っている。
「前半から右サイドで押し込めていたので、相手はそっちに気を取られていたと思います。自分が中に入った時にボールが来てゴールを奪えたから、監督としては狙い通りだったかもしれません。でも僕としては、ああそういう意図だったのかと、そこでやっと理解できた感じ。(新たな手法について)半信半疑な部分もあったけど、セレッソという強い相手にボールを持てたので、自信につながりました」
ただし、開幕戦では終盤に追いつかれて引き分けに終わった。そして柏との第2節では優位な時間帯もあった前半にゴールを奪えず、後半に2失点を喫して敗北。山中は古巣を相手にチーム最多の3本のシュートを放ったり、鋭いクロスを味方に届けたりしたが、結果には繋がらなかった。
世界でも例の少ない前衛的なスタイルに挑み、良い時間帯を作りながらも、白星はまだ得ていない。ここまでの2試合は、前半は面食らった相手を向こうにボールを保持したものの、後半に敵が慣れてきて潮目が変わった。
ノーミスを前提とした勇敢なスタイル。
柏で中盤の一角を担った細貝萌は、今季の横浜の印象を次のように語った。
「中盤をやっていた僕としては、すごく難しかったですよ。相手はサイドバックが中に入ることでポゼッションを高めていたので、僕らはなかなか的を絞れず、ボールを取れなかった。だけど、(GK中村)航輔のところまでボールが来なかったから、怖くはなかった。航輔もこのまま堪えてくれと言っていた」
細貝はドイツ時代に、ペップのバイエルンと対戦した経験がある。比較にならないことを承知でその点を尋ねると、「さすがにレベルが違いますよ。あっちはもっとボールを動かして、ミスはほぼなかったから」と答えてくれた。
ミスをしないことが前提に立つような(無論、それはどんなチームにも不可能だが)、勇敢なスタイル。まだ結果は出ていないけれど、そう好意的に捉えているマリノス・ファンもいるはずだ。
最終ライン裏の広大なスペースを使われたことには対処すべきだし、低い位置で回して奪われた時の怖さも実感した。それでも面白い挑戦であることは間違いない。