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36歳フェデラーが世界1位を奪還。
ヒーロー健在の幸せと待望の次代。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2018/02/28 10:30
テニス界の象徴とも言えるロジャー・フェデラーの健在は喜ばしいが、ライバルの存在がその輝きをさらに増すはずだ。
フェデラーが頂点にいれば安泰……か。
そのプレーから真似をしようと試みていることもある。
「よく見ていると、無駄な動きとか力みがないんですよね。無駄なステップがなくて効率的に動いている。だから長時間の試合をしても、そこまで疲れないのかなって。足を細かく動かすフットワークだと疲れるので」
それが加齢によるスタミナの衰えをカバーすることになるし、ひいては長くテニスを続けていくためのヒントだと考え、自分も無駄を削ぎ落とすことに取り組んでいる最中だ。
発見の手応えもあってか、「今年は去年よりいける感じがしてる。体力もまだ落ちてないですし、メンタルも落ち着いていていい状態」と今シーズンにかける意欲は十分だ。
フェデラーが最高のお手本となって引っ張る男子テニス界は、かつてない円熟時代を迎えているが、もちろん刺激を受けているのは30代だけではない。20代も10代も多くの選手がフェデラーに憧れて育ってきた。
フェデラーの息が長い分だけ、その世代は幅広い。落ち目ではない、カッコいいままの〈マイ・ヒーロー〉とまだ対戦するチャンスがあるという状況がどれほどうれしいことか。
なぜだか見飽きることがないのがフェデラーのプレーであり、フェデラーがカップを掲げるシーン。頂点にフェデラーがいて元気にプレーしていればなんとなくテニス界全体が安泰……。
ところが、どうも少し物足りない。そんなふうに感じ始めているファンは少なくないはずだ。
ここ1年ジョコビッチとの対戦がない。
2016年のウィンブルドンのあと、2017年のシーズン開幕まで戦列を離れたフェデラーだが、離脱までの1年半の間にもっとも多く対戦したのはノバク・ジョコビッチだった。その数9回。3勝6敗とフェデラーは大きく負け越した。
フェデラー復活のこの1年、そのジョコビッチとの対戦を私たちはまだ一度も見ていない。ジョコビッチは昨年、手首や肘の故障などによる不振を経て、前の年のフェデラー同様にシーズン後半を完全に休んでいた。
また、フェデラーが昨年1月に復帰したときにナンバーワンだったアンディ・マリーも臀部のケガが長引き、昨年のウィンブルドンを最後に公式戦にはまだ戻って来ていない。
ランキングポイントを見ても、10105ポイントを保有するフェデラーをラファエル・ナダルが9760ポイントで追っている状況で、さらに、3位のマリン・チリッチになると4960ポイントと大差がつく。