錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER
錦織圭の復帰プロセスは上々だ。
アガシ、チャンらの成功例を再び!
posted2018/02/23 11:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
AFLO
テレビもネットも新聞も、連日ケガからの復活のドラマをあの手この手で伝えている。数々のストーリーの中心は、金・銀・銅のメダルを手にした今をときめくウィンタースポーツのアスリートたちだ。
時節柄、広く国民的関心事にはなっていないが、1カ月ほど前に手首のケガから半年ぶりの実戦復帰を果たした錦織圭が、2つのチャレンジャー大会を経てツアーレベルの大会に戻って来た。
ニューヨーク州ロングアイランドで開催されたカテゴリー『250』のニューヨーク・オープン。ツアー大会としては昨年8月にモントリオールで開催されたカナダ・マスターズ以来で半年ぶりだったが、準決勝まで勝ち進み、昨年の全米オープン準優勝者で世界ランク11位のケビン・アンダーソンとファイナルセットのタイブレークまで戦い抜いた末に敗れた。
トップ10レベルに力を引き出された。
まだ本調子ではない。しかし、驚くべきはその2時間12分の勝負の中で見せた錦織の蘇りだ。ショットの質の向上、スピードとパワーへの対応力の変化――。0-5まで一気に突き放された立ち上がりと、第2セット中盤以降ではまるで別人だった。
復帰後初めて対峙したトップ10レベルの敵に眠っていた力を引き出されたことは間違いないが、錦織自身もこの機会を得たときのために、それを生かすために、入念に“我慢”のプロセスを踏んできたように思う。
全豪オープンを回避し、カリフォルニア州ニューポートビーチでのチャレンジャー大会で復帰の舞台を踏んだのは、その全豪オープンの真っ最中だった。世界ランク238位のデニス・ノビコフを相手に1回戦で敗れる様子は、メルボルンでも多くの関係者がネットライブなどで観戦したが、時期尚早だったのではないかと言い合ったものだ。
タイミングを間違えば、ケガの再発や自信の喪失を招くのではないか、と。しかし結論から言うと、それは誤った見方だった。