プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシーとコンテの溝が深すぎる。
アブラモビッチ体制は意外とケチ?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2018/02/20 08:00
稀代の戦術家であるコンテ。チェルシーの現状は彼の指導力を生かしきれているのか。
経営陣には続々と実力者を補強も。
チェルシー経営陣も競争激化を認識してはいる。だが、その意識はピッチ外での実績に偏っている。昨冬にコマーシャル・ディレクターとして新役員を迎え入れ、今冬には4年前から不在だったCEOにビジネス畑の実力者を任命しているからだ。
先頃公表された昨季売上高は3億6000万ポンド(約540億円)台だった。クラブ史上最高の数字だが、マンチェスターの両雄には1億ポンド以上も水を開けられている。加えて来季からは、同じロンドン市内のトッテナムが、アーセナルと同じく6万人規模のスタジアムで入場料収入を稼ぐようになる。
反面、チェルシーのスタジアム改築案は、当初5億ポンド(約750億円)と見込まれた建設費が2倍に膨らむ可能性も指摘され、2024年オープン予定へと先送りされている。
クラブ側とすれば、今季の移籍市場で新戦力10人を獲得したという反論もある。モラタ獲得に要した6000万ポンド(約90億円)はクラブ最高額でもあった。だが、問題は補強の実態だ。
テリー、ランパードの時代なら……。
コンテがモラタ獲得を切望していたのは、まだコスタがいた2年前の夏だった。最終的に冬の移籍市場でオリビエ・ジルーが獲得されたが、アーセナルで主砲になりきれなかったジルーは、コスタからのグレードアップではあり得ない。
同じことは、ネマニャ・マティッチ(現マンチェスター・U)が去って獲得したティエムエ・バカヨコやダニー・ドリンクウォーター、ジョン・テリー(現アストンビラ)の後釜候補だったアントニオ・ルディガーにも言える。
昨季まで所属したテリーは交代要員だったとはいえ、キャプテンとしての存在感は維持していた。かつてのチェルシーが結果を残せたのは、テリーを筆頭にフランク・ランパード、ディディエ・ドログバ、ペトル・チェフとリーダーシップの持ち主が揃っていた事実もある。
一方で今季は、キャプテンマークを巻くギャリー・ケーヒルでさえ、アンドレアス・クリステンセンの台頭もあって不動のレギュラーではなくなり、存在感が弱まっている有様だ。