プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシーとコンテの溝が深すぎる。
アブラモビッチ体制は意外とケチ?
posted2018/02/20 08:00
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
チェルシーでの就任1年目、プレミアリーグ初挑戦にして優勝。それもプレミアでは異例の3バック基本システム化が功を奏してのリーグ制覇だった。2年目の今季は第27節終了時点で4位とノルマであるCL出場圏内につけている。
にもかかわらず、アントニオ・コンテ監督には「今季限り」との見方が絶えない。
原因はフロントとの不仲、厳密に言えば、クラブ役員マリナ・グラノフスカイアと深まる一方の亀裂だ。同女史は、クラブを牛耳るロマン・アブラモビッチの個人顧問役からクラブ役員となり、移籍市場での契約交渉などを任されている「側近」の1人だ。
コンテは開幕前から、フロント主導の補強への不満を口にし続けた。年俸アップは受け入れても、3年契約延長には応じなかったコンテの言動を受けて、祖国イタリアからは、ACミランや、前職の代表チームが就任要請を検討していると伝えられたほどだ。
そして迎えた今季、過密日程でシーズン半ばに早くも主力に疲れが出始めた。格下相手に勝ち点を落とし、解任の噂が高まった。後任候補には、マッシミリアーノ・アッレグリ(ユベントス)、マウリツィオ・サッリ(ナポリ)、ルイス・エンリケ(前バルセロナ)といった名前が、メディアで挙げられている。
コンテの現状には、チェルシーサポーターの同情が寄せられている。リーグ戦連敗した直後、「必勝」とされたウェストブロムウィッチとのホームゲームでのことだ。キックオフ直後から「アントニオ! アントニオ!」の大合唱が起きた。コンテ自身も、コールが湧き起こるたびに拍手で応え、勝利後には「監督としての仕事を評価してくれている」ファンに感謝の投げキッスを送った。
痛かったコスタとの衝突、放出。
もっとも、コンテに全く非がないわけではない。チェルシーにおける補強がフロントのコントロール下で行われ、監督に実質的な発言権がない事実は、就任前から覚悟していたはずだ。逆に不平不満は監督交代の噂を招き、チームに余計な不安要素を与えてしまう。
また昨季までの得点源だったジエゴ・コスタ(現A・マドリー)は、コンテとの衝突によってすでに放出されている。現在チェルシーはアルバロ・モラタが調子を落とし、今冬ミヒー・バチュアイをドルトムントにレンタルし、FWの戦力不足が深刻になっている。
ただコスタとの関係が保てていれば、ここまで問題にはならなかっただろう。そして3バック中央が天職だったはずのダビド・ルイスも、コスタと同じ理由で今はほぼ戦力外の扱いを受けている。