プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシーとコンテの溝が深すぎる。
アブラモビッチ体制は意外とケチ?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2018/02/20 08:00
稀代の戦術家であるコンテ。チェルシーの現状は彼の指導力を生かしきれているのか。
タイトル獲得すると補強が消極的に。
とはいえ、真っ先に態度を改めるべきはチェルシーのフロントだろう。タイトルを獲得した直後はなぜか補強が消極的になり、成績が出なければ監督の首を挿げ替える。ここ近年はそんなスタンス続きだ。
アブラモビッチ体制下では積極補強のイメージが強いが、それは2003年のクラブ買収を機に成り上がりを狙った最初の数年間のみ。以降は、オーナーの資金力に依存しない独立採算経営を目指し、財布の開け閉めが厳格にコントロールされるようになった。
その姿勢自体は健全と言えるが、継続的な進歩を妨げるようでは問題だ。前回の監督交代もそのパターン。2014-'15シーズンに、コスタとセスク・ファブレガスを計6200万ポンド(約93億円)で獲得してプレミア王座に就きながら、翌シーズンはババ・ラーマン(シャルケにレンタル移籍中)の2170万ポンド(約33億円)が最高額。2度目のジョゼ・モウリーニョ体制がシーズン半ばに終焉を迎えた。
2012年にはアブラモビッチオーナーの願望だったCL優勝が現実となったが、これを成し遂げたのは当時暫定監督だったロベルト・ディマッテオ体制でのこと。
翌シーズンのディマッテオ解任後も、ラファエル・ベニテス暫定指揮下でのEL優勝によってCL出場権を獲得した。この流れもあり“いざとなれば監督を代えればよい”との認識をさらに強めたのかもしれない。
アザールが獲れたのは幸運だった?
しかし、当時と今ではトップ4争いの難易度が違う。6年前のマンチェスター・シティは、ペップ・グアルディオラに訓練されたハイレベルな集団ではなかった。マンチェスター・ユナイテッドも、モウリーニョを監督に迎えて大型補強を繰り返すほどではなく、そもそもトップ4候補にトッテナムは含まれていなかった。
一方のチェルシーはというと、2012年夏のアザール獲得が最後のビッグネーム獲得である。
チェルシーが獲得に成功した理由は、CL王者の肩書きの他、マンUが難色を示した3200万ポンド(約48億円)の移籍金と、マンCが嫌った13億円超の年俸提示。移籍タイミングがもう少し遅ければ、アザールは“いずれかのマンチェスター”を選んでいたのではないか。