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V9時代の森祇晶で考える正捕手論。
小林誠司に期待する、ある条件とは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/02/02 17:00
同学年のエース菅野の信頼が厚い小林は、その期待に応えて盤石の正捕手の座を築けるか……。
捕手の基礎能力と投手陣の信頼では12球団でも指折りに。
入団当初は独特のキャラクターから、なかなか投手陣の信頼を得ることができずにリードでも苦労の連続だった。ただ、エース・菅野智之投手とのコンビで経験を積み、コミュニケーション力を高めて、昨年はゴールデングラブ賞も獲得。今では投手陣の信頼もかなり高まっている。
もちろんリードやゲームの流れを読み切る洞察力という点では、森祇晶という先達の域に比べると遥かに遠いのは確かだ。ただ、肩の強さやキャッチングなど捕手としての基礎能力の高さと投手陣の信頼という点では12球団の現役捕手でもトップクラスにあることも間違いない。
要は、小林は正捕手という階段を、確かに一歩、二歩と登り出しているということである。
ただ、そういう捕手としての能力の高さは評価しつつも、高橋由伸監督や球団が小林に決して満足できないのは打力の低さにある。
だから球団はそんな小林に試練を与えるがごとく、毎年、様々なライバルを充ててくる。この辺も森の境遇と似ているところだ。
宇佐見、岸田、大城、広畑、小山……次々と捕手を獲得。
小林を指名した2年後の2015年のドラフトで、巨人は城西国際大学の宇佐見真吾捕手を4位で指名した。
昨年のドラフトでは2位で大阪ガスの岸田行倫、3位でNTT西日本の大城卓三と社会人出身の即戦力捕手をダブル指名。そればかりか育成枠でも立正大の広畑塁捕手と関西大の小山翔平捕手と大卒捕手2名を指名して、合わせて4人の捕手を獲得する異例の補強を断行している。
もちろん相川亮二、實松一成の両捕手がベテランとして去り、若返りを図るという大方針の中での補強でもあるが、明らかに小林を脅かす存在としてのライバル獲得でもあった。
そのサバイバル戦を勝ち抜くためには打力の向上も必要かもしれないが、最終武器はやはり捕手力なのである。
そのことはV9を支えた名捕手が示してくれている。