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V9時代の森祇晶で考える正捕手論。
小林誠司に期待する、ある条件とは? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2018/02/02 17:00

V9時代の森祇晶で考える正捕手論。小林誠司に期待する、ある条件とは?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

同学年のエース菅野の信頼が厚い小林は、その期待に応えて盤石の正捕手の座を築けるか……。

長い現役生活で2割5分を超えたのはたった3シーズン。

 現役20年間で規定打席に到達したシーズン最高打率は、1965年の2割7分7厘というのがある。ただ打率が2割5分を超えたのはわずかに5シーズン(規定打席到達シーズンに限ると2シーズン)で、逆に打率2割3分を下回ること12シーズンというのが生涯記録だ。

 V9時代、ONを中心にした強力打線の中にあって、この森のあまりの貧打ぶりに、球団も川上哲治監督も決して満足していた訳ではなかった。

 その証が何人となく森に充てがわれた強力なライバルたちの存在なのである。

 レギュラーを獲った翌'60年には甲子園大会を沸かせた平安高出身の野口元三と明大出身の佐々木勲を獲得。その後も六大学のスター捕手だった慶大・大橋勲や東洋大の宮寺勝利、'65年には市神港出身の吉田孝司、'67年には立大で六大学戦後2人目の三冠王を獲得した槌田誠とこれでもか、という勢いで捕手を補強し、森を追い立てた。

 しかしそれでも森は、そうしたライバルをはねのけ、あの打率で正捕手を守り続けたのである。

 捕手というのは、いかに守備力がモノをいうポジションかを改めて思い知らされる結果でもあった。

 いま、そんな森と同じような境遇に置かれているのが、巨人の小林誠司捕手である。

規定打席到達打者の中では最下位の打率。

 入団1年目の2014年にはまだまだ阿部慎之助という大きな壁に跳ね返されたが、持ち前の強肩と守備力を武器に3年目の一昨年には、阿部の故障に伴う一塁コンバートで正捕手の座を獲得した。

 打率2割5分5厘→2割2分6厘→2割4厘→2割6厘。

 これが小林の入団以来の打率だった。

 森よりはややましといえばましだが、それでもこの2年間は連続で規定打席到達打者の中では最下位の数字だ。ただ、森と同じように、この打撃でも小林は巨人の正捕手として起用されてきた。

 その背景はやはり守備力なのである。

【次ページ】 捕手の基礎能力と投手陣の信頼では12球団でも指折りに。

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