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国民全員でセリエA誤審を糾弾!?
ビデオ判定の礎は“名物法廷番組”。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2017/11/05 07:00

国民全員でセリエA誤審を糾弾!?ビデオ判定の礎は“名物法廷番組”。<Number Web> photograph by Getty Images

今季からビデオ判定システムの本格運用が始まったセリエAだが、じつは約40年も前から映像を用いて疑惑のシーンを議論する人気番組があった。

判定の精度だけでなく、退場や警告も減少中!

 それでも、判定の精度が確実に上がったことは、如実にデータとして現れている。

 審判協会内のVAR機構の統計によれば、開幕7節(全69試合)を終えた時点で、ビデオ判定補助システムは309回使用された。その内、主審がもともと下したジャッジを裏付けたものが288回で、判定の覆ったケースが21回あった。つまり、得点や退場に関する決定的誤審が1節あたり3度も防がれた計算になる。

 昨シーズンの同時期と比較すると、退場数が24から15へと大幅に減り、警告数も昨季の313枚から245枚へ20%以上も減少するなど、別のメリットも見えてきた。

“映像には言い逃れできない”と覚悟を決めた選手たちが注意深くフェアプレーを心がけるようになり、無駄と悟ったせいか執拗な抗議も激減。試合進行がスムーズになったとレフェリーたちから歓迎の声が挙がっているという。

「我々は前例のない試みに挑んでいる」

 一方で選手たちのストレスの原因となっているVAR使用時の分断時間だが、7節までの統計によると1回平均54秒かかっている。

 ただし、開幕から3節まで1回の使用あたり1分22秒かかっていた分断が、システム運用に習熟してきた4節以降の3節では平均40秒へ大幅短縮に成功。、実質的には選手交代1回分とそう変わりない。不安視されていたロスタイムの増大も、昨季までの平均時間5分17秒と比べると19秒増に留まっている。

「分断やタイムロスが問題になることは審判団側も想定していた。我々は前例のない試みに挑んでいる」

 昨季限りで勇退した名審判リッツォーリは、今季からセリエA審判任命委員長に就任した。ブラジルW杯でファイナルを裁いた元トップレフェリーは、サッカー界の先頭を切って新時代に挑むことを楽しんでいる風でもある。

【次ページ】 “白黒つけなきゃ気がすまない”イタリア人気質。

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