サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
森保監督にサッカー界全体の協力を。
五輪代表とクラブの「難しい関係」。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/10/19 11:30
サンフレッチェ広島の全盛期を築いた森保一監督は、日本屈指の若手監督の1人。東京五輪という特大の期待を背負うに相応しい人選だ。
選手を出したくないクラブの立場もわかるが……。
五輪代表の位置づけとしてさらに重い現実は、ケガでキャンプを辞退しながらも、直後のJリーグに出場した選手がいたことである。
クラブの立場は分かる。週末のリーグ戦に向けて、治療やリハビリに専念させたかったのだろう。けが人や出場停止などを抱えている場合は、なおさら慎重にならざるを得ない。選手はクラブの判断に従うから、こちらも責めることはできない。
ここで問うべきは、こうしたケースが例外ではなかったことだ。手倉森誠監督だけでなく、歴代の五輪代表監督が直面した悩みである。
クラブでスタメンで常時出場していなくても、メンバー入りする可能性があれば、選手に無理をさせたくないと考えるのが監督の立場だ。いずれにせよ、Jリーグのシーズン中の活動には、様々な障害が付きまとうということである。
手倉森監督のチームはその後も国内でのショートキャンプを繰り返し、ほとんどぶっつけ本番のスケジュールで'16年1月のリオ五輪アジア最終予選に挑んだ。出場権を勝ち取ったことでチームは祝勝ムードに包まれたが、現場の奮闘が頼りだったとの印象は否めない。
リオ五輪に久保裕也が出場できなかった痛み。
Jリーグのシーズン中に、五輪代表の活動期間を確保できるのか。それぞれに立場が異なるなかで、Jリーグのクラブが足並みを揃えて五輪代表に協力できるのか。
堂安律のように海外でプレーする選手の招集についても、所属クラブとの関係をいまから構築していく必要がある。リオ五輪の開幕直前に久保裕也が出場できなくなった痛みを、東京五輪で繰り返すわけにはいかない。
メダルをターゲットとするなら、オーバーエイジの招集も欠かせない。所属クラブとの調整だけでなく、時の日本代表監督と選手の招集についてどのような合意を結ぶのかも重要だ。
森保監督のもとで戦うのは、選手だけではない。サッカー界全体のバックアップなしに、東京五輪の成功はないのだ。