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森保監督にサッカー界全体の協力を。
五輪代表とクラブの「難しい関係」。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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posted2017/10/19 11:30

森保監督にサッカー界全体の協力を。五輪代表とクラブの「難しい関係」。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

サンフレッチェ広島の全盛期を築いた森保一監督は、日本屈指の若手監督の1人。東京五輪という特大の期待を背負うに相応しい人選だ。

東京五輪でのメダル獲得は、期待というよりもノルマ。

 東京五輪で彼が率いるのは、1997年以降生まれの選手たちだ。“ドーハの悲劇”を知らない世代である。それでも、森保監督の実体験は強い説得力を持つに違いない。クロスボールに懸命に食らいつく映像を見せられて、ワンプレーの重みを感じ取らない選手はいないだろう。森保監督がこれから選手たちに伝えていく言葉の一つひとつが、選手たちの胸に響いていくはずだ。

 3年後の東京五輪では、メダルの獲得が期待される。期待ではなくノルマと言っていいかもしれない。大きな名誉と同じくらいの重圧を、森保監督は背負っていくことになる。

 森保監督とチームに追い風となるのは、ホスト国のメリットを生かせることだ。

 U-21やU-22世代が継続的に活動している国は、世界的にも少数派と言っていい。欧州ではU-21選手権が行われているが、U-22世代の代表は基本的に編成されない。

 ただ、日本は2020年のホスト国である。五輪で上位進出を目ざす国であれば、あらかじめ来日して試合をすることにメリットを見出すはずだ。海外での国際大会へ積極的に足を運びつつ、国内でのテストマッチも実現に力を注いでいきたい。'08年の北京五輪直前にアルゼンチンと対戦できたのも、時差が1時間しかないことが後押しとなっている。

A代表と違い、選手を優先的に招集できるわけではない。

 マッチメイクと同じくらいに重要なのが、国内での強化スケジュールの確保だ。

 チーム作りが本格化するのは、五輪の1年前からになるだろう。ここから先はトレーニングキャンプやテストマッチを精力的にこなしていきたいが、歴代の五輪チームはシビアな現実に直面した。

 五輪を目ざすチームの活動は、日本代表と根本的に異なる。FIFAの管轄下に置かれないため、Jリーグのシーズン中に行なわれることが多い。

 リオ五輪のチームを例に取ろう。

 U-22日本代表としてチームが編成された'15年は、2月にシンガポールへ遠征し、同国のU-23代表とテストマッチを消化した。3月にはU-22ミャンマー代表を招いて国内でテストマッチを行い、同月下旬からリオ五輪アジア1次予選に臨んだ。

 マレーシア、ベトナム、マカオとの1次予選を首位で通過すると、次の活動は6月下旬まで待たなければならなかった。しかも、招集された21人が揃ったのはわずか2日間で、2度のトレーニングだけで7月1日のU-22コスタリカ代表戦に臨んでいる。活動期間は4日間だった。

 次の活動は8月のキャンプで、これまた4日間の短期だった。前回と同じように2度の練習を経て、京都サンガとの練習試合で締めくくられている。

 ACLに出場するガンバ大阪と柏レイソルの選手は、このキャンプでは選考対象外だった。「Jリーグで真剣勝負を戦うことが、一人ひとりの選手の強化につながる」という大義が優先された。

【次ページ】 選手を出したくないクラブの立場もわかるが……。

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