プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人の選手が体験する幸福な死闘。
「10.8」と通じる極限の負けられなさ。
posted2017/09/29 17:00
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
巨人にとって厳しい戦いは続いている。
9月27日の中日戦は村田修一内野手のソロ、阿部慎之助内野手のタイムリーとベテラン2人の活躍で2点を先制。守っても先発のマイルズ・マイコラス投手が今季最多の139球を投げて9回途中まで1失点の力投を見せ、最後は守護神のアルキメデス・カミネロ投手が締めて4連勝を飾った。
クライマックスシリーズ出場をかけたDeNAとのデッドヒート。ただ現実は1桁となった残り試合を消化していくに従って、どんどん厳しくなっている。
28日の阪神戦でDeNAが敗れてゲーム差はなくなった。しかし引き分けはDeNAが2つ多く、負け数は巨人が66に対してDeNAは64と2つの差がある。実質的にはまだ1ゲーム差となるわけだ。
そういう意味ではまだDeNAの戦いには負けられる余裕があるが、巨人にはない。残された道は、とにかく勝ち続けることだけなのだ。1つでも負ければ、その時点でCSへの道はほぼ絶望となり、今季も終わることになるのである。
「こんな戦いをできる選手は幸せですよ」の言葉の意味。
その土壇場の状況で思い出す言葉がある。
「こんな戦いをできる選手は幸せですよ」
1994年10月8日、69勝60敗でピタリ並んだ巨人と中日が130試合目の最終戦で優勝をかけた決戦を行った。いわゆる「10.8決戦」を前にした長嶋茂雄監督(現巨人軍終身名誉監督)の言葉だった。
もちろん当時と今季の状況はレベルが違う。当時はCSもないし、ましてや今の巨人は優勝を逃した3位争いである。100か0、生きるか死ぬか――そんな「10.8決戦」に比べられるシチュエーションではないのは分かっている。
ただ、制度の良し悪しは別にして、CSという次のステージがある。そこに進むために、いまはまさに100か0か、生きるか死ぬかの戦いを戦っている。シーズン最後の負けられない戦いという点では、1994年も2017年も同じなのである。