プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人の選手が体験する幸福な死闘。
「10.8」と通じる極限の負けられなさ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2017/09/29 17:00
9月17日のDeNA戦で力投し、6勝目をあげた畠。今季DeNA戦は3戦3勝だ。「ここまできたら、CSで投げたいです」とコメントしている。
「こういう試合で勝つことが巨人の伝統の力なんです」
「10.8決戦」では巨人が6-3で中日を破ってリーグの頂点に立っている。
「こういう試合で勝つことが巨人の伝統の力なんです」
そのとき長嶋監督は語っていた。
V9という前人未到の記録を達成し、その後も常勝を義務付けられる中で、毎シーズンのように優勝争いに加わり、高い確率でリーグ制覇もしてきた。CS制度が導入された2007年以降も、10シーズン全てのCSに出場してきたのは巨人だけである。
常に重圧のかかる試合を経験してきた歴史が、選手を成長させて、チームを強くしてきた。それこそが巨人の強さの秘密で、そういう試合を経験できる、自分を成長させるチャンスが得られる「選手は幸せだ」とミスターは語ったのだ。
そんな“巨人の栄光”が消えかけているいま、それでも巨人にとって、特に若い選手にとっては残りの3試合は、今だけではなく将来に向けて、とても大事な経験になるはずなのである。
30日からの阪神2連戦は若い2投手にかかっている!
9月30日からの阪神との2連戦(東京ドーム)にはルーキーの畠世周と左のエースにのし上がった田口麗斗と若い投手が先発マウンドに立つ。
「投げさせていただいて、チャンスをいただいている。そのチャンスを生かさなければいけないと思ってマウンドに上がっている」
こう語る畠の武器は155キロをマークするストレートだ。ただ、畠は野球を始めた小学生のときに、最初に覚えた変化球はチェンジアップだったという。子供の頃から誰よりもボールは速かったが、自身の中で最大の武器はストレートだけではなかった。その力のある球を生かした中で、フォークやカーブなどを使える緩急なのだと言う。