プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人の選手が体験する幸福な死闘。
「10.8」と通じる極限の負けられなさ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2017/09/29 17:00
9月17日のDeNA戦で力投し、6勝目をあげた畠。今季DeNA戦は3戦3勝だ。「ここまできたら、CSで投げたいです」とコメントしている。
ギリギリの経験ができる「幸せ」を意識できるか?
9月23日の広島戦。この試合に先発した畠が打たれた安打はわずか3本だった。しかし初回に丸佳浩外野手に初球をソロ本塁打、4回に四球を挟んで菊池涼介内野手と松山竜平外野手の安打、バティスタの犠飛で2失点して敗戦投手となった。
「早いカウントから振ってくるのはわかっていた。(丸は)甘い球は見逃してくれない。思い切って初球から攻められなかった」
7月下旬からローテーションに定着して順調に結果を残してきたが、相手チームも対戦を重ねることで対応してくる。追い込まれると攻略が難しくなるために、緩急を使う前のカウント球を積極的にスイングされた結果だった。
負けられない戦いでは、ただ自分のピッチングをしただけではダメなのである。いかに相手との勝負をするか。それができなかった。
「こういう状況の中でも、相手の変化に対応してどう投げていくか。使っていただいている限り、結果を出さないといけないと思いますし、同時にそういう意識を持ってやることの大切さを経験させてもらっている」
畠が語るように、その経験ができることが「幸せ」なのである。
「点を取られても、どう次の1点を防ぐかが大切」
それは4年目の田口にしても同じことだった。ローテーション投手としてチーム最多の10勝を挙げた昨年は、シーズン終盤に失速した。打線の援護に恵まれず9月は1勝3敗と勝てなかった。
今季も7月までは16試合に先発して6回3自責点以内に抑えたクオリティースタート率(QS率)は8割1分2厘と圧倒的な安定感を誇っていた。しかし、8月以降は9先発でQSは4試合とQS率は4割4分4厘まで下がってしまっている。
「先発の一番の仕事はしっかりゲームを作ること」
田口は言う。
「そういう意味では先に点を与えない、点を取られても、どう次の1点を防ぐかが大切だと思ってマウンドに立っている」