Jをめぐる冒険BACK NUMBER
結局、鹿島と何が違うのだろうか。
浦和の「勝負強さ」問題はまだ続く。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKyodo News
posted2017/09/22 13:00
「力はあるけど勝負弱い」という屈辱的な評価を、浦和レッズは覆すことができるのだろうか。
小笠原の危機感が、チームの雰囲気を締めるのか。
この2年間、矢島は試合経験を積むためにファジアーノ岡山に期限付き移籍していた。そこで目にしたのが、鹿島のOBである岩政のセットプレーの練習ひとつとっても妥協せず、細かく、厳しい姿勢だったという。
「大樹さんの姿を見てきただけに、鹿島もピリピリとした雰囲気の中でやっているのかなって。それは今の浦和にはないもので、セットプレーの練習にしても、ふわっとした感じで終わってしまう。結果論ですけど、こういう試合で鹿島はちゃんと勝つし、浦和は最近鹿島に競り負けているイメージがあるので、やっぱり細かいところから、熱量を持ってしっかりやっていかないといけないと思いましたね」
セットプレーやスローインのマークの仕方など、子どもの頃から何十年もやってきたわけで、それをどこまで細かく、厳しく、突き詰められるか。
先日、鹿島のキャプテンである小笠原満男からこんな話を聞いた。
「20代の頃はダッシュをサボっても、疲れているんだろうって思われたけど、今は少しでも手を抜けば、終わりが近いなっていう見方をされる。だから、今はそれを見せない戦いだし、引退のプレッシャーとの戦い。走れない、勝てないなら、俺がいる意味はないですからね」
チーム最年長の38歳がこの危機感、このテンションで日々のトレーニングに臨んでいるのだから、鹿島のトレーニングの雰囲気は推して知るべしだろう。
土居「叩いてやろうと思いました」
ちなみに鹿島の選手たちは、この日の浦和のメンバーを試合前のミーティング中に知った。そこには柏木陽介の名前も、ラファエル・シルバの名前もなく、最も警戒すべき興梠慎三の名前も、ベンチメンバーの中にあった。
そこで大岩剛監督は「舐められていると捉えてもおかしくないメンバーだ」と熱弁して、選手の心を焚き付けた。
むろん、浦和が舐めたなんてことはなく、負傷やコンディションの問題でメンバーを入れ替えたわけだが、鹿島からすれば、レギュラーメンバーではないという事実がすべてだった。土居が言う。
「前線の選手が予想とだいぶ違った。僕らがこの一戦に懸けていた想いは強かったですし、剛さんからも熱い言葉というか、『こういうメンバーで来ているぞ』って言われて、高まっていた気持ちがさらに高まったというか、叩いてやろうと思いました」
鹿島の勝利をもぎ取る力を語るうえで、こうした大岩監督のモチベーターとしての手腕も見逃せない。