オフサイド・トリップBACK NUMBER
オーストラリア側から見た日本戦。
「10回やったら6回か7回は……」
posted2017/09/10 08:00
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph by
Takuya Sugiyama
日本がロシアW杯出場を決めたオーストラリア戦。日本の視点では「快勝」に見えたこの試合、オーストラリアの視点で見ると、どんな試合だったのだろうか。
話をしてくれたのはオーストラリアのベテラン記者で、日本滞在歴もあるグラハム・デイビス氏。あの試合が「逆側」の視点でどう見えたかを率直に語ってくれた。
――W杯ロシア大会のアジア最終予選が終わった。日本はグループ首位で本大会出場を決めたが、やはり最も注目されたのはオーストラリア戦だったと思う。まずは、あの試合の率直な感想を聞かせてほしい。
オーストラリアのプレーは良くなかった。逆に日本は、非常にいい準備ができていたと思う。日本のハリルホジッチ監督は試合の前日会見で念入りに準備したと話していたが、その言葉には説得力があった。おそらくオーストラリア代表を、まるで自分のチームのように詳しく把握できたと感じていたはずだ。
――具体的には?
日本の監督は、中盤をいかに支配するかが鍵になることを見抜いていたと思う。実際、オーストラリアがボールを持ったときには、日本の選手は強いプレッシャーをかけてきた。その分だけミスが増えたし、日本は簡単にボールを奪うことができた。そしてボールを奪うと、クィックなカウンターを仕掛けてきた。タッチライン沿い、特に両サイドのウイングの位置も、実に効果的に突いている。
――とはいえ日本の選手は終始、前からプレスをかけていたわけではなかった。前半には、オーストラリアの3バックがセンターライン付近に上がり、ボールをキープする場面も多かった。
その指摘は正しいよ。オーストラリアはハーフライン付近でも、かなりボールをキープしていた。それは前半のスタッツにもはっきりと表れている。
ところが、いざアタッキングサードに侵入してチャンスを作ろうとするとかなり手を焼いた。その段階になると、日本はすでに9人のフィールドプレイヤーで守る体制に移っていたからだ。しかも日本の2ライン、DFとMFのラインは、見事に統率が取れていた。
表現を変えれば、オーストラリアはボールを持っていたというよりも、持たされていたのかもしれない。ボール支配率で圧倒していたのはオーストラリアでも、試合の中身で圧倒していたのは日本だったわけだから。
――日本の守備は、たしかに成功していた。懐が深かったし、DFとMFラインの間のスペースもしっかりケアしていた。長谷部は新たに注目を集めている。
攻撃が不発に終わった要因としては、選手の起用法も挙げられる。
オーストラリアのアンジ・ポステコグルー監督は、正規のFWを1人も先発させなかった。逆に7人のMFを起用するという策を取っている。
だが後半にはユリッチとケーヒルを投入し、ゴールをダイレクトに狙っていくようになったし、それでチーム全体に方ようやく向性が生まれた。日本が2点目を奪う直前の10分ほどの間は、ゴール前でいい流れになりかけたし、日本に少しプレッシャーをかけることもできていたと思う。
だが試合全体を通して見れば、オーストラリアが組織的に攻勢に出ることができていたのは、あの時間帯だけだった。