One story of the fieldBACK NUMBER
日本ハムの新スタジアム構想が凄い!
「入場料無し」「弁当無し」の衝撃。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byHokkaido Nippon-Ham Fighters
posted2017/08/16 08:00
メジャーリーグの人気スタジアムなども参考に、世界のどこにも無い、最先端のエンターテインメントとしてのスタジアムを目指す。
選手たちが腰や膝を怪我するたび、心が痛んだ。
そもそも、日本ハムは北海道に移転した2004年から札幌ドームを本拠地としている。ただ、球場は球団ではなく札幌市所有である。使用料やその他の経費を含め、年間約26億円を支払い、サービス向上のための改修なども一存ではできない。そして最大の問題が現場レベルでの制限だったという。
「バックヤードの狭さは感じますし、開催のたびにトレーニング器具などを全部運びださなくてはならない。人工芝の硬さについても現場から声が上がっていました。ただ、すぐにどうこうできるものではありませんでしたから」
サッカー場との入れ替えを行うため、人工芝を巻き取り可能な薄いものにせざるを得なかった。コンクリートの上に敷かれたクッション性の低い芝は選手の膝や腰に負担をもたらす。毎年、選手会からは要望する声もあがっていたが、我慢してもらうしかなかったという。
「誰かが腰や膝を怪我して登録を抹消する。そういう情報を耳にする度に辛いですよね」
例えば今年、春先から打率4割をキープして話題になっていた近藤健介が椎間板ヘルニアで離脱した際には、前沢も胸が痛んだという。そういう個人、個人の小さな葛藤が蓄積し、ようやく新球場構想は動き出した。
「僕は野球をスポーツだと認めていません」って!?
「僕は1度、球団の外に出ていますが、今、思えば出てよかったです」
前沢は人材派遣会社を経て北海道日本ハムファイターズへ入ると、球団が札幌に移転した後、4年間、DeNAに転職した。
そこで出会ったのは野球界とは別世界の住人たちだった。
ネクタイもしない。敬語も使えない。ある時はランチを共にした若者から、こう言われた。
「僕は野球をスポーツだと認めていません。だってベルトしてやるスポーツなんてあります?」
それでもビジョンを実現するための熱と理論、多様性を認める柔軟性は確かにあった。
「合理性が新鮮に見えました。異なる価値観を受け入れるし、敬語は上手くなくても1人、1人がピュアなんです。また、これまでだと資産は目減りしていくという考え方でしたが、IT業界はつくったものをどんどんアップデートしていく。最初にできたものを60%として、そこからどんどん向上させていくんです。球場だって最初の形からどんどんリニューアルしていけばいい」