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「渋谷」の名を冠したBリーグ1年目。
本拠地・青学の体育館で何を得たか。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph bySUNROCKERS SHIBUYA
posted2017/07/08 09:00
流行の最先端である渋谷区でプロスポーツが開催される。サンロッカーズがBリーグ1年目に果たした役割と意義は大きい。
大学がプロの施設をホームタウンで使う幸福感。
試合はアルバルクに敗れたことで来シーズンへの宿題が残ったが、興味深かったのが、トイレに関する工夫だった。
普段は開放していない体育館近くのトイレを使えるようにしただけではなく、体育館内の女子トイレ内には係員を2人配置し、空いている個室へ案内した。個室のドアは空室なのかわからないという、女子トイレ特有の問題をクリアするためだった。
すでに臨場感抜群の会場だった。あとは余計なストレスを取り除けば、一度来た観客にまた来ようと思ってもらえる。立錐の余地もないくらいに人で埋まった会場を見ながら、岡田は幸せをかみしめていた。
「わたしは、日本の大学も出ていない。でも、青学に通い詰めて、学食でも食事をすることが増え、ひょっとしたら青学の方以上に体育館については詳しいことがあるかもしれなくて(笑)。それはなんか、不思議で。そして、大学がプロの施設をホームタウンで使うというのも日本で初めてじゃないですか。そこに携われることができたのはすごく幸せでしたよね」
日本代表の親善試合も青学の体育館で見られる。
日本ではじめて、大学の施設を使ってプロの興行ができるようになった意義は小さくない。7月29日と30日の日本代表の親善試合も、会場には青学が選ばれた。表参道駅から徒歩5分、渋谷駅から徒歩10分。そんなところで代表の試合が見られる。
その道を開いたのが、サンロッカーズと青山学院大学だったわけだ。
彼らは日本バスケットボール界には貢献した。では、渋谷の街に対してはどうだろうか。
もしかすると、1990年代ほど渋谷という街の洗練度、特別さはないのかもしれない。外国人観光客もスクランブル交差点で写真を撮ったあと、渋谷の街にはお金を落とさずに、他の街へ行ってしまうことが多いという問題もある。
でも、だからこそ面白いのだ。
渋谷には先進的な区長がいて、BUNKAMURAなど街の文化を作り上げてきた東急グループがある。サンロッカーズの支援企業もグループには含まれており、やれることはたくさんある。
渋谷を名乗ることになったのは、偶然の産物だったのかもしれない。
しかしそれゆえに、地区名を冠したチームというオリジナリティーも生まれた。それを生かすも殺すも、サンロッカーズに携わる者次第である。