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「渋谷」の名を冠したBリーグ1年目。
本拠地・青学の体育館で何を得たか。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph bySUNROCKERS SHIBUYA
posted2017/07/08 09:00
流行の最先端である渋谷区でプロスポーツが開催される。サンロッカーズがBリーグ1年目に果たした役割と意義は大きい。
1年目に関しては渋谷というハンデは大きかったが。
そんなサンロッカーズだが、Bリーグ初年度の観客動員では下から3番目の16位。ただ、前年比68.6%の増加幅は、上から3番目だ。
確かに、本拠地までのアクセスの良さはリーグ屈指だ。
しかし、それまでは柏と東京の2つを“漠然と”フランチャイズにしていた実業団チームだった。いきなり固定ファンをたくさん作れるわけもない。なおかつ初めて青学を使用することになったため、スタッフの労力は試合会場の運営体制づくりに1から取り組む作業へと割かざるを得なかった。
1年目に関しては、渋谷をホームにするメリット以上に、ハンデが大きかった。
しかし苦しい船出の中でも、2つの可能性が感じられた。
1つ目が昨シーズンまでロサンゼルス・レイカーズでプレーしていた、ロバート・サクレの獲得だ。
コービー・ブライアントとも一緒にプレーしていたサクレは、シーズン途中の1月に加入した。企業の部活動にルーツを持ち、地味だと見られがちだったチームは、サクレとともにプロチームとしての階段を登っていった。
入団会見から派手だった。会場は、渋谷駅から直結している渋谷ヒカリエ。さらに、サクレ加入以前から話題になっていた、かき氷式アイス『サクレ』を製造するフタバ食品とのコラボも同時に発表した。
同社は栃木県の企業ではあるが、「サクレ」がいるチームがブレックスと試合をするならと、マッチデースポンサーという形でブレックスとのホームゲームをサポートしてくれることになった。試合は当時のチームの最多動員記録を記録した。
青学出身の2人の主将と、ファンを鼓舞するサクレ。
もちろん、サクレ獲得の効果は営業面だけにとどまらない。
サンロッカーズの社長を務める岡博章には、忘れられない光景がある。岡は、チームの実業団時代に実際に選手としても活躍していた人物だ。社長の職にありながら、バスケットボール選手の気持ちがわかるからこそ、栃木との試合で見せたサクレの行動に心を打たれた。
「サクレがファンを鼓舞するために、客席にむかって両手で仰ぐような仕草をしましたよね? あれに心を打たれたんです。今のサンロッカーズの選手は、黙々とプレイしているようなイメージがある人も多いと思います」
サンロッカーズには伊藤駿と広瀬健太という2人のキャプテンがいる。くしくも、2人とも青学出身だ。ポイントガードの伊藤は、今シーズンはケガを抱えながら、強気なプレーを見せた。スモールフォワードの広瀬は、リーグのスティール王に輝くなど、地味な仕事に黙々と取り組んでいた。
「もちろん、そういう選手がチームには必要です。ただ誰かが頑張ったら、盛り上げて、チームを高揚させることも必要じゃないですか。大人しいチームに、サクレという明るいキャラクターが来たことは本当に大きかったです。その結果、シーズンが進むにつれてファンの方たちも声を出してくれたり、立ち上がって応援をしてくれるような人が増えましたから」
もちろん競技面でも、サクレがチームの守備とリバウンド面を強化して、一時は絶望的だったCS出場権を手にしたことは特筆すべきことだ。